
「なぜ、あの人は盗撮なんてしたんだろう?」
「一度手を出してしまったが、やめられない…」
「家族が盗撮で逮捕された。どうして…」
ニュースで後を絶たない盗撮事件。その報道に触れるたび、多くの人が疑問や憤り、あるいは当事者として深い悩みを抱えているのではないでしょうか。
盗撮は、被害者に深刻な心の傷を残す卑劣な犯罪です。しかし、その一方で、加害者の多くが「やめたいのに、やめられない」という葛藤の中にいることも事実です。
この記事では、「盗撮の心理」という非常にデリケートで複雑なテーマについて、犯罪心理学、精神医学、依存症治療の観点から、どこよりも深く、そして網羅的に解説していきます。
【この記事でわかること】
- 盗撮が単なる「性欲」だけでは説明できない複雑な心理的背景
- 犯罪心理学から見た、盗撮に駆り立てる複数の動機
- 盗撮が「依存症(病気)」である科学的な理由
- 盗撮加害者の典型的なタイプ分け
- 「やめたい」と思った時に踏むべき具体的なステップ(相談先・治療法)
- 家族や周囲の人ができること、してはいけないこと
- 被害者が受ける心の傷と必要なケア
この記事は、単に加害者を断罪するためだけのものではありません。盗撮という問題の根源にある「心理」を正しく理解することで、加害者は回復への一歩を踏み出し、社会全体で再犯を防ぎ、そして何より被害者の苦しみに寄り添うための土壌を育むことを目的としています。
もしあなたが今、自身の行為に悩んでいるなら、あるいは身近な人の問題に心を痛めているなら、どうか一人で抱え込まないでください。この記事が、暗いトンネルを抜けるための、最初の光となることを願っています。
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第1章 盗撮とは何か? – 犯罪の定義と驚くべき現状
まず、私たちが向き合う「盗撮」が、法的にどのように定義され、社会でどれほど深刻な問題となっているのか、客観的な事実から確認しましょう。
法的定義:「撮影罪」の新設と関連法規
これまで「盗撮」という行為そのものを直接取り締まる法律はなく、各都道府県の「迷惑防止条例」によって処罰されてきました。しかし、スマートフォンの普及による手口の巧妙化や被害の深刻化を受け、社会的な要請が高まりました。
そして2023年7月13日、「撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)」が施行されました。これは、盗撮問題における歴史的な一歩です。
- 撮影罪のポイント
- 目的: 同意なく、人の性的姿態を撮影する行為などを処罰する。
- 処罰の対象:
- 同意なく、わいせつな部位(胸部、臀部、下着など)や性的な言動をしている姿を撮影する行為。
- 場所(住居、トイレ、浴場など)や衣服(スカートの中など)を指定し、通常見えない性的姿態を撮影する行為。
- 罰則: 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
- 特徴:
- 全国一律の法律であるため、どこで犯行に及んでも同じ基準で罰せられる。
- 撮影した画像を不特定多数に提供した場合(SNS投稿など)は、さらに重い罰則(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)が科せられる。
- 未遂でも処罰の対象となる。
この「撮影罪」の新設は、国が盗撮を極めて悪質な性犯罪であると明確に位置づけたことを意味します。もはや「ちょっとした出来心」「いたずら」では決して済まされない、重大な犯罪なのです。
驚くべき検挙件数の推移と実態
警察庁の統計によると、迷惑防止条例違反(盗撮)の検挙件数は、過去10年で倍増以上しており、2021年には初めて5,000件を超えました。
- 2012年: 2,423件
- 2021年: 5,019件
これはあくまで検挙された件数であり、被害者が気づいていないケースや、泣き寝入りしているケースを含めると、実際の発生件数はこの何倍、何十倍にもなると推測されます。
また、特筆すべきは、加害者の約7割がスマートフォンを使用しているという事実です。かつては特殊な小型カメラが必要でしたが、今や誰もが持つスマホが高性能な「盗撮ツール」になり得る時代。これが、盗撮のハードルを下げ、加害者の裾野を広げている一因と考えられます。
加害者の職業も、会社員、公務員、学生など多岐にわたり、「普通の人」が罪を犯している現実が浮き彫りになっています。
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第2章 【核心】盗撮に駆り立てる複雑な心理 – 犯罪心理学からのアプローチ
「なぜ、社会的地位も家庭もある人が盗撮を?」
この疑問の答えは、「性欲」という一言では到底説明できません。盗撮犯の心の中では、複数の心理的要因が複雑に絡み合っています。ここでは、犯罪心理学の知見を基に、その深層心理を6つの側面から解き明かしていきます。
性的興奮と「スリル」というスパイス
もちろん、性的興奮が主要な動機の一つであることは間違いありません。しかし、それは単に性的な画像を見たいという欲求だけにとどまりません。盗撮行為には、特有の「スパイス」が加わります。
- 背徳感と禁忌: 「してはいけない」ことをしているという背徳感が、逆説的に興奮を高めます。ルールを破る快感は、多くの依存行為に見られる特徴です。
- リスクとスリル: 見つかるかもしれないという緊張感、捕まるかもしれないという恐怖。このスリルが、脳内で興奮物質であるドーパミンやアドレナリンを分泌させ、強烈な快感(報酬)となって脳に刻み込まれます。まるでジェットコースターやギャンブルにハマるのと同じメカニズムです。
撮影した画像を見返すこと以上に、「撮影するという行為そのもの」が、彼らにとって最大の興奮源となっているケースは少なくありません。
歪んだ支配欲と対象の「モノ化」
盗撮は、相手の尊厳を著しく踏みにじる行為です。加害者の深層心理には、他者をコントロールしたいという「支配欲」が渦巻いています。
- 相手の知らないところで支配する: 被害者は、自分が撮影されていることに気づいていません。この「自分だけが知っている」「相手を一方的に支配している」という感覚が、加害者に万能感や優越感を与えます。
- 人格の否定と「モノ化」: 加害者は、被害者を一人の人間として見ていません。感情や尊厳を持つ個人ではなく、自分の欲求を満たすための「モノ」「オブジェクト」として捉えています。この「モノ化」によって、罪悪感が麻痺し、行為を正当化しやすくなります。撮影した画像は、支配の証しであり、戦利品(トロフィー)のような意味合いを持つのです。
承認欲求の欠如と低い自己肯定感
一見、支配欲とは矛盾するように聞こえるかもしれませんが、その根底には極端に低い自己肯定感と、満たされない承認欲求が存在することが多いです。
- 現実世界での無力感: 仕事や家庭、人間関係で強いストレスや劣等感を抱え、自分を「価値のない人間だ」と感じている。
- 盗撮による「有能感」の獲得: 現実世界では得られない成功体験や有能感を、盗撮という「誰にもバレずに何かを成し遂げる」行為によって代償的に得ようとします。リスクを乗り越えて撮影に成功した瞬間、「自分はできる人間だ」という歪んだ自己肯定感が一時的に満たされるのです。
- 他者からの評価への渇望: 撮影した画像を匿名でネットにアップロードし、「いいね」や称賛のコメントを得ることで、承認欲求を満たそうとするケースも増加しています。これは、SNS時代の新たな盗撮動機と言えるでしょう。
現実逃避とストレスコーピングの誤作動
多くの加害者が、犯行動機として「仕事のストレス」「家庭内の不和」などを挙げます。彼らにとって盗撮は、耐えがたい現実から一時的に逃避するための手段、つまり誤ったストレス対処法(コーピング)なのです。
- 行為への没頭: 撮影対象を探し、計画を立て、実行に移す。この一連のプロセスに没頭している間は、現実の悩みや不安を忘れられます。
- 手軽な「解決策」: 運動や趣味といった健全なストレス解消法は、時間や労力がかかります。しかし盗撮は(特にスマホを使えば)比較的容易に行えてしまい、かつ強烈な刺激が得られるため、手っ取り早い逃避手段として選ばれやすいのです。
しかし、これは根本的な解決にはならず、行為後の自己嫌悪がさらなるストレスを生み、再び盗撮に手を染める…という悪循環に陥ります。
好奇心とコレクション欲
特に若年層や犯行の初期段階で見られる動機です。
- 禁じられたものへの好奇心: 「スカートの中はどうなっているんだろう?」といった、幼稚で無分別な好奇心が引き金となるケースです。最初はゲーム感覚やいたずらの延長線上から始まります。
- 収集癖(コレクション欲): 撮影した画像を収集すること自体が目的化するタイプです。さまざまなシチュエーション、さまざまなタイプの画像をコンプリートしたいという、歪んだコレクション欲が動機となります。このタイプは、犯行が常習化・巧妙化しやすい傾向があります。
共感性の欠如
すべての動機の根底にある、最も重要な心理的特性が「共感性の欠如」です。
- 被害者の痛みを想像できない: 自分の行為が、相手にどれほどの恐怖、屈辱、そして生涯にわたるトラウマを与えるのかを想像する能力が著しく欠けています。
- 自己中心的な思考: 自分の欲求(興奮したい、ストレスを発散したい)が最優先され、他者の権利や感情は考慮の外に置かれます。逮捕後の取り調べで「これほど相手を傷つけるとは思わなかった」と供述する加害者が多いのは、この共感性の欠如を如実に示しています。
これらの心理は単独で存在するのではなく、一人の人間の中で複雑に絡み合い、その時々の状況によって、ある動機が強く現れたり、別の動機が顔を出したりするのです。
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第3章 盗撮は「やめられない病」 – 行為依存症としての側面
「一度だけ」「これで最後」そう思いながらも、繰り返してしまう。この状態を、単に「意志が弱い」と片付けてはいけません。現代の精神医学では、盗撮は「行為依存(プロセス依存)」の一種、つまり治療が必要な「病気」として捉えられています。
行為依存(プロセス依存)とは何か?
アルコールや薬物といった「物質」への依存に対し、特定の「行為」にのめり込み、コントロールできなくなる状態を「行為依存」と呼びます。ギャンブル依存症や買い物依存症、インターネット依存症などがこれにあたります。
盗撮は、この行為依存の典型例です。
脳をハイジャックする「依存のサイクル」
盗撮依存に陥ると、脳内では恐ろしい悪循環が形成されます。
- 渇望・衝動: 仕事のストレスや不安、あるいは特定の場所(駅のエスカレーターなど)が引き金(トリガー)となり、「撮りたい」という強烈な衝動に襲われる。
- 儀式的行動: 衝動を抑えきれず、対象を探し、撮影の準備をするなど、行為に向けた儀式的な行動が始まる。この時点で既に脳内では興奮が高まっている。
- 実行: 盗撮行為に及ぶ。スリルと興奮がピークに達し、脳内の報酬系から快楽物質であるドーパミンが大量に放出される。現実の苦痛から解放されたような、一時的な多幸感を得る。
- 罪悪感と自己嫌悪: 行為が終わると、冷静さを取り戻し、「なんてことをしてしまったんだ」という激しい後悔、罪悪感、自己嫌悪に苛まれる。
- さらなるストレス: この罪悪感や自己嫌悪が、新たな強いストレスとなる。
- (1.へ戻る): このストレスから逃れるため、再び脳が手っ取り早い快楽(盗撮)を求め、衝動が再燃する。
このサイクルを繰り返すうちに、脳は盗撮による強烈な刺激に慣れてしまい(耐性の形成)、より強い刺激、より頻繁な行為を求めるようになります。そして、盗撮をしていない時間は、イライラしたり、落ち着かなくなったりする「離脱症状」まで現れるようになります。
もはや、本人の意志の力だけでこのサイクルを断ち切ることは、極めて困難なのです。
ドーパミンと報酬系:脳科学的メカニズム
私たちの脳には「報酬系」と呼ばれる神経回路があり、食事や性行為など、生存に必要な行動をとった時にドーパミンを放出して快感を与え、「その行動をまたやりたい」と学習させます。
依存症は、この報酬系が薬物や特定の行為によって「ハイジャック」された状態です。盗撮のスリルと興奮は、この報酬系を異常に活性化させ、ドーパミンを過剰に放出させます。脳は、この人工的で強烈な快感を「生存に不可欠なもの」と誤って学習してしまい、他の健全な楽しみ(趣味、家族との時間など)では満足できなくなってしまうのです。
盗撮が「病気」であるというのは、こうした明確な脳科学的根拠に基づいています。
おすすめ第4章 盗撮加害者の類型 – あなたはどのタイプ?
盗撮に至る心理は複雑ですが、専門家の間では、加害者の傾向をいくつかのタイプに分類して理解を試みることがあります。これは治療方針を立てる上でも重要です。ここでは代表的な4つのタイプを紹介します。自分が、あるいは身近な人がどのタイプに近いか考えてみてください。
タイプ1:ストレス発散型(衝動的)
最も多いとされるタイプです。
- 特徴: 普段は真面目で、社会的な規範意識も比較的高い。しかし、仕事や人間関係で過度なストレスを抱えており、そのはけ口として衝動的に盗撮に及ぶ。
- 心理: 行為自体への強いこだわりは少なく、あくまでストレスからの「逃避」が主目的。
- 犯行: 計画性は低く、駅や商業施設などで突発的に行うことが多い。
- 治療アプローチ: 根本原因であるストレスへの対処法(ストレスコーピング)を学ぶことが中心となる。認知行動療法が有効。
タイプ2:性的倒錯(パラフィリア)型(計画的・常習的)
盗撮行為そのものに強い性的興奮を覚えるタイプです。
- 特徴: 窃視症(voyeurism)など、精神医学的な性的倒錯(パラフィリア障害)の診断がつく場合がある。盗撮が性的嗜好の核心部分を占めている。
- 心理: 撮影行為、撮影した画像の閲覧が、主要な性的興奮の源。
- 犯行: 計画性が高く、高性能なカメラを使用したり、巧妙な手口を考え出したりする。常習性が高く、再犯リスクも高い。
- 治療アプローチ: 専門的な精神科治療が必要。性的嗜好そのものを変えるのは困難なため、衝動をコントロールする方法を身につける集団療法や、衝動を抑える薬物療法などが検討される。
タイプ3:コレクション・ゲーム感覚型
行為のスリルや、画像を収集すること自体が目的となっているタイプです。
- 特徴: 若年層に比較的多く見られる。共感性が低く、行為の犯罪性や被害者の苦痛への認識が希薄。
- 心理: 「バレずに撮れるか」というゲーム感覚や、さまざまな画像をコンプリートしたいというコレクション欲が強い。SNSでの称賛を求める傾向も。
- 犯行: より難しい状況での撮影に挑戦するなど、行為がエスカレートしやすい。
- 治療アプローチ: 認知の歪み(「ゲーム感覚」「悪いことだと思っていない」)を修正し、被害者の視点を理解させる教育的アプローチ(心理教育)が重要となる。
タイプ4:偶発的・状況依存型
明確な常習性はないものの、特定の状況下で犯行に及んでしまうタイプです。
- 特徴: 酒に酔った勢いや、仲間からのそそのかしなど、状況的な要因が大きく影響する。
- 心理: もともと規範意識が低いか、あるいはその場の雰囲気に流されやすい。
- 犯行: 単発で終わることも多いが、一度成功体験を得ると、次の犯行へのハードルが下がる危険性がある。
- 治療アプローチ: 犯行に至った状況を分析し、アルコールとの付き合い方を見直したり、危険な人間関係から距離を置いたりするなど、環境調整が中心となる。
【注意】
これらのタイプは明確に分かれているわけではなく、複数のタイプが混在しているケースがほとんどです。例えば、ストレスから始まった盗撮が、次第に性的倒錯の要素を帯びてくることもあります。正確な診断と治療方針の決定は、必ず専門家が行う必要があります。
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第5章 社会的背景とテクノロジーの進化
個人の心理的問題に加え、現代社会特有の背景が盗撮を助長している側面も見逃せません。
スマートフォンの高機能化と小型カメラの低価格化
前述の通り、今や誰もが持つスマホが、超高画質で無音撮影も可能な「盗撮器」になり得ます。ネット通販では、ペン型、ボタン型、USBメモリ型など、巧妙に偽装された小型カメラが安価で簡単に入手できてしまいます。こうしたテクノロジーの進化と普及が、犯行のハードルを劇的に下げました。
SNSとインターネット:画像の拡散と承認欲求の増幅
かつて盗撮画像は、加害者個人が秘匿するか、ごく一部のアンダーグラウンドなコミュニティで共有されるだけでした。しかし今は、Twitter(X)や匿名掲示板などにアップロードすれば、瞬時に世界中に拡散され、不特定多数からの「いいね」や称賛を得ることが可能です。
これが第2章で述べた「歪んだ承認欲求」を刺激し、新たな犯行の動機となっています。また、一度ネットに流出した画像は、完全に削除することがほぼ不可能であり、被害者に半永久的な苦しみを与え続けます。
アダルトコンテンツへの容易なアクセスとその影響
インターネット上には、プロが制作したアダルトビデオだけでなく、素人による盗撮やリベンジポルノといった違法なコンテンツも溢れています。こうしたコンテンツに日常的に触れることで、性的興奮の閾値(いきち)が上がり、より過激で、より倒錯した刺激を求めるようになる可能性があります。また、「みんなやっている」という誤った感覚が生まれ、盗撮行為への心理的抵抗感を麻痺させる一因にもなり得ます。

第6章 もし、やめたいと思ったら – 克服への具体的なロードマップ
この記事を読んでいる方の中には、今まさに「盗撮をやめたい」と苦しんでいる当事者の方がいるかもしれません。希望を捨てないでください。盗撮は治療可能な「病気」です。ここでは、克服への具体的な道のりを、3つのステップで示します。
ステップ0:問題の認識と受容 – すべてはここから始まる
最も重要で、最も難しいのがこの最初のステップです。
- 否認をやめる: 「自分は依存症ではない」「いつでもやめられる」といった否認の壁を壊し、「自分はコントロールを失っている」「助けが必要だ」と認めること。
- 責任の受容: 自分の行為が犯罪であり、被害者を深く傷つけたという事実から目をそらさず、その責任を受け入れること。
このステップを一人で乗り越えるのは困難です。だからこそ、次のステップが不可欠になります。
ステップ1:専門機関へ相談する – 一人で戦わない
勇気を出して、外部の助けを求めてください。相談先は一つではありません。
- 精神科・心療内科:
- 行為依存や性的倒錯の診断と治療が可能な医療機関です。「依存症専門」「性犯罪専門」などを標榜しているクリニックが望ましいです。うつ病など他の精神疾患を併発している場合も多く、総合的な治療が受けられます。
- 依存症専門の民間リハビリ施設:
- 同じ悩みを持つ仲間と共に、回復プログラムを受ける施設です。通所や入所など形態は様々です。
- 自助グループ (Self-Help Group):
- 同じ問題を抱える当事者同士が、匿名でミーティングを行い、体験を分かG合い、支え合う場です。代表的なものに「OAR-Japan(性依存症者のための自助グループ)」や、認知行動療法をベースにした「SMARPP(スマープ:依存症回復支援プログラム)」などがあります。参加は無料で、秘密が厳守されます。同じ苦しみを知る仲間がいるという感覚は、回復の大きな支えになります。
- 弁護士:
- もし既に警察の捜査を受けている、あるいは被害者との示談を考えている場合は、刑事事件、特に性犯罪に詳しい弁護士への相談が不可欠です。早期に相談することで、今後の対応について的確なアドバイスを得られます。
どこに相談すればいいかわからない場合は、まずはお住まいの地域の「精神保健福祉センター」に電話してみてください。公的な機関であり、秘密厳守で適切な相談先を紹介してくれます。
ステップ2:具体的な治療法を知る
専門機関では、主に以下のような治療法が組み合わせて用いられます。
- 認知行動療法 (CBT – Cognitive Behavioral Therapy):
- 依存症治療の中心的アプローチです。盗撮に至る思考のパターン(認知の歪み)を特定し、それをより現実的で健全なものに修正していく訓練をします。また、どんな時に盗撮したくなるか(トリガー)を分析し、衝動が起きた時の対処法(コーピングスキル)を学びます。
- 動機づけ面接:
- 本人が「変わりたい」という動機を自ら見つけ、強めていけるように、治療者が寄り添いながら対話を進める手法です。
- 心理教育:
- 依存症のメカニズム、性犯罪の加害性が被害者に与える影響などを学び、問題への理解を深めます。
- 薬物療法:
- 盗撮衝動そのものを消す薬はありませんが、衝動性を抑える効果が期待されるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や、併発しているうつ病・不安障害の治療薬が処方されることがあります。
- 集団療法・家族療法:
- 自助グループのように、他の患者と対話する中で回復を目指したり、家族関係の調整を通じて再発防止を図ったりします。
ステップ3:再犯防止のための環境調整
治療と並行して、盗撮に手を染めにくい環境を自ら作ることが極めて重要です。
- 物理的な環境調整:
- スマートフォンのカメラ機能を使えなくする。(アプリで制限、物理的にシールを貼るなど)
- フィルタリングサービスを利用し、アダルトサイトや関連情報にアクセスできないようにする。
- 不要なSNSアカウントを削除する。
- 行動パターンの変更:
- 自分にとってトリガーとなる場所(特定の駅、書店など)や状況(一人で長時間過ごす、飲酒するなど)を意図的に避ける。
- 通勤ルートや時間を変える。
- 健全な代替行動の習得:
- ストレスを感じた時や、暇な時間に没頭できる健全な趣味を見つける。(運動、音楽、読書、ボランティアなど)
- 盗撮で得ていたスリルや興奮を、スポーツやクリエイティブな活動など、社会的に容認される形で代替する。
回復への道は、決して平坦ではありません。何度も後戻りしそうになるでしょう。しかし、専門家の助けを借り、一歩ずつでも進み続ければ、必ず光は見えてきます。
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第7章 家族や周囲の人ができること
家族が盗撮で逮捕された、あるいは盗撮の事実を知った時、その衝撃と混乱は計り知れません。怒り、失望、羞恥、悲しみ…様々な感情が渦巻くでしょう。しかし、感情的に非難するだけでは、問題を悪化させるだけです。ここでは、ご家族や近しい人が取るべき適切な対応を解説します。
- 1. 非難ではなく、「病気」として理解する姿勢を持つ
- 最も大切なことです。彼の行為は断じて許されるものではありませんが、その背景には本人の意志だけではコントロールできない「依存症」という病気があるかもしれない、という視点を持ってください。人格そのものを否定するのではなく、「行為と病気」を切り離して考えることが、対話の第一歩です。
- 2. 専門機関への相談を粘り強く促す
- 本人が問題を否認している場合でも、「あなたのことが心配だ」「一緒に考えたい」というメッセージを伝え続け、精神科や自助グループなど、第三者の専門家につながるよう根気強く働きかけてください。家族だけで解決しようとせず、専門家の力を借りることが不可欠です。
- 3. 「共依存」に陥らない
- 本人の問題を自分の問題のように抱え込みすぎ、尻拭いをしたり、問題を隠蔽したりすることは「共依存」と呼ばれ、本人の回復を妨げます。借金の肩代わりや、周囲への嘘をつくといった行動は避けるべきです。本人が自分の問題と向き合う機会を奪ってはいけません。
- 4. 家族自身もケアを受ける
- 加害者の家族もまた、大きな精神的ダメージを受けます。家族を支援するための相談窓口や、依存症患者の家族会なども存在します。家族が心身ともに健康でいることが、本人の回復を支える上で非常に重要です。
第8章 被害者の視点 – 決して消えない心の傷
ここまで加害者心理を中心に論じてきましたが、忘れてはならないのは、この犯罪が被害者にどれほど深刻で、永続的なダメージを与えるかという事実です。
- 深刻な精神的ダメージ:
- 盗撮被害は、魂の殺人とまで言われます。いつ、どこで、誰に見られているかわからないという恐怖から、人間不信や対人恐怖に陥ります。
- フラッシュバック、不眠、うつ状態など、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に長く苦しめられます。
- 公共の場所(電車、エスカレーター、トイレ)がすべて危険な場所に感じられ、日常生活が脅かされます。
- 「なぜ私が?」という自責の念:
- 「あの時、あの服を着ていたから?」「あの場所に行ったから?」と、何の落ち度もないにもかかわらず、自分を責めてしまう被害者も少なくありません。
- 画像のデジタルタトゥー化と二次加害:
- 撮影された画像がネットに流出すれば、それは「デジタルタトゥー」として半永久的に残り続けます。就職、結婚など、人生のあらゆる局面でその存在に怯えなければなりません。
- また、SNSなどで被害者を特定しようとしたり、興味本位で画像を拡散したりする行為は、被害者の心をさらに深く傷つける「二次加害」であり、断じて許されません。
もしあなたが被害に遭われたら、決して一人で抱え込まないでください。あなたは何も悪くありません。
- 警察に相談する: 勇気がいることですが、まずは警察に被害を届け出ることが、犯人検挙と再発防止の第一歩です。
- 性犯罪被害相談電話「#8103(ハートさん)」: 全国共通の相談窓口です。どこに相談していいかわからない場合、まずはこちらに電話してください。
- ワンストップ支援センター: 各都道府県に設置されており、相談、カウンセリング、医療的支援、法的支援などを一か所で受けられます。
社会全体が、盗撮は被害者の尊厳を根こそぎ奪う重大な性暴力であると認識し、被害者に寄り添う姿勢を持つことが強く求められています。

第9章 盗撮に関するQ&A
最後に、盗撮に関してよくある質問にお答えします。
Q1: 盗撮は一度きりでも犯罪ですか?
A1: はい、一度きりでも明確な犯罪です。「撮影罪」は未遂でも処罰対象であり、常習性や回数は関係ありません。「出来心だった」は通用しません。
Q2: 盗撮依存症は、本当に治りますか?
A2: はい、適切な治療と本人の強い意志、そして周囲のサポートがあれば、回復は可能です。「完治」というよりは、糖尿病や高血圧のように、病気と上手く付き合いながら、コントロールしていく「回復(リカバリー)」という考え方が一般的です。再発のリスクは常にありますが、治療を続けることで、盗撮のない平穏な生活を取り戻すことは十分に可能です。
Q3: 治療に健康保険は適用されますか?
A3: 精神科や心療内科での治療は、基本的には健康保険が適用されます。うつ病や不安障害など、併存する精神疾患の治療として行われる場合が多いです。ただし、カウンセリングが自由診療となる場合や、民間のリハビリ施設の費用など、保険適用外のものもありますので、事前に各機関に確認することが重要です。
Q4: 逮捕されたらどうなりますか?
A4: 逮捕されると、最大72時間身柄を拘束され、取り調べを受けます。その後、検察官が「勾留」が必要と判断すれば、さらに最大20日間身柄拘束が続く可能性があります。最終的に起訴されれば刑事裁判となり、有罪判決が下れば前科がつきます。社会的信用の失墜、懲戒解雇など、人生に計り知れない影響が及びます。被害者との示談が成立しているかどうかが、その後の処分に大きく影響します。
Q5: 家族が逮捕されたら、まず何をすべきですか?
A5: まずは、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談してください。当番弁護士制度を利用することもできます。弁護士は、本人と接見し、取り調べへの対応をアドバイスしたり、早期の身柄解放や被害者との示談交渉に向けて動いてくれたりします。冷静さを失わず、専門家を頼ることが最も重要です。

【まとめ】負の連鎖を断ち切り、回復への一歩を
この記事では、「盗撮の心理」を多角的に掘り下げてきました。
盗撮が、単なる性欲ではなく、スリル、支配欲、低い自己肯定感、ストレス、共感性の欠如といった複数の心理が絡み合った、根深い問題であることをご理解いただけたかと思います。
そして、それは意志の弱さだけでなく、脳の報酬系を巻き込んだ「依存症」という病気であり、治療によって回復が可能であることもお伝えしました。
もしあなたが当事者として悩んでいるなら、今日が、その負の連鎖を断ち切るための最初の日です。一人で抱え込まず、専門機関の扉を叩く勇気を持ってください。そこには、あなたと同じように苦しみ、そして回復しようと歩んでいる仲間がいます。
もしあなたがご家族や周囲の方なら、感情的な非難ではなく、病気への理解と、専門家へつなぐサポートをお願いします。
そして社会全体が、この問題の背景にある心理的な脆弱性に目を向け、テクノロジーの悪用を防ぎ、何よりも被害者の心の叫びに耳を傾けることが、盗撮という悲しい犯罪をなくしていくための唯一の道です。
回復への道は、決して楽ではありません。しかし、その一歩を踏み出す価値は、計り知れないほど大きいのです。
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