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【専門家が解説】性的同意とは?|性暴力・性加害の加害者にも被害者にもならないために知るべき全て

手をつないでいる夫婦の後ろ姿
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  1. はじめに:「性的同意」を知ることは、すべての人にとっての”お守り”
  2. 第1章:今さら聞けない「性的同意(セクシュアル・コンセント)」の基本
    1. 1-1. 性的同意とは?―「対等な立場で、積極的に、いつでもやめられる」合意のこと
    2. 1-2. 「なんとなく」は危険!同意があったとは言えないケース
    3. 1-3. どうやって同意をとるの?―大切なのは対話
  3. 第2章:性暴力・性加害とは何か?―その定義と見えにくい実態
    1. 2-1. 性暴力・性加害の広い定義
    2. 2-2. 2023年刑法改正―「不同意性交等罪」の新設
    3. 2-3. 日本における性暴力の驚くべき実態
  4. 第3章:なぜ「性的同意」がこれほどまでに重要なのか?
    1. 3-1. 個人の尊厳と自己決定権を守るため
    2. 3-2. 性暴力・性加害の根本的な予防策となるから
    3. 3-3. 良好で対等な人間関係の土台となるから
  5. 第4章:自分は大丈夫? 加害者にならないためのチェックリスト
    1. 【加害者にならないための思考チェック】
    2. 【加害者にならないための行動原則】
  6. 第5章:もしも被害に遭ってしまったら… あなたは決して悪くない
    1. 5-1. 被害者の心に起こること―「セルフブレーム」の罠
    2. 5-2. まず、あなたにしてほしいこと―安全の確保と相談
    3. 5-3. あなたの味方になる相談窓口リスト
  7. 第6章:傍観者でいないために。社会全体で取り組むべきこと
    1. 6-1. 「包括的性教育」の重要性
    2. 6-2. 日常会話やメディアの表現に敏感になる
    3. 6-3. バイスタンダー(傍観者)介入のススメ
  8. おわりに:知識を力に、より良い未来へ

はじめに:「性的同意」を知ることは、すべての人にとっての”お守り”

「性的同意」という言葉を、ニュースやSNSで目にする機会が増えたと感じませんか?

もしかしたら、「自分には関係ない」「なんだか難しそう」と感じている方もいるかもしれません。しかし、性的同意の知識は、性的な行為に限らず、私たちの日常にある全てのコミュニケーションの土台となる、非常に大切な考え方です。

  • 大切なパートナーと、より良い関係を築きたい
  • 自分の子どもが、加害者にも被害者にもなってほしくない
  • 友人や同僚が悩んでいたら、正しく寄り添いたい
  • そして何より、自分自身が意図せず誰かを傷つけたり、自分が傷つけられたりすることを防ぎたい

そう願うすべての人にとって、「性的同意」を正しく理解することは、自分と相手の心と身体を守るための”お守り”のような知識になります。

この記事では、「性的同意とは何か?」という基本的な問いから、それがなぜ今、これほどまでに重要視されているのか、そして「性暴力」「性加害」とどう繋がっているのかを、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

非常にデリケートなテーマですが、目をそらさずに一緒に学んでいきましょう。この記事を読み終える頃には、あなたの中に、自分と大切な人を守るための、確かで具体的な知識が身についているはずです。

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第1章:今さら聞けない「性的同意(セクシュアル・コンセント)」の基本

まず、最も重要な「性的同意」の定義から確認しましょう。言葉の響きから難しく感じるかもしれませんが、基本はとてもシンプルです。

妻の話しを聞く夫

1-1. 性的同意とは?―「対等な立場で、積極的に、いつでもやめられる」合意のこと

性的同意とは、キスや性行為などを含むあらゆる性的な行為を行う前に、その行為に関わる全ての人が「心からそうしたい」と積極的に望んでいることを、お互いに確認し合うことです。

重要なのは、以下の要素が全て満たされていることです。

  • 積極的(Enthusiastic)であること: 「嫌じゃないから、まあいいか」は同意ではありません。「やりたい!」という前向きな気持ちが基本です。沈黙や抵抗しないことは、決して同意のサインではありません。
  • 自発的(Freely given)であること: 暴力や脅迫、プレッシャー、上下関係の利用など、いかなる強制もなく、自由に意思決定できる状態でなければなりません。
  • 具体的(Specific)であること: 「キスすること」に同意したからといって、それ以上の行為(服を脱がす、性交するなど)に同意したことにはなりません。 一つ一つの行為について、その都度確認が必要です。
  • 撤回可能(Reversible)であること: 一度は「YES」と言っても、途中で気分が変われば、いつでも「NO」と言ってやめる権利があります。 過去に同意したからといって、今回も同意しているとは限りません。
  • 情報に基づいている(Informed)こと: 「コンドームを着けると言ったのに着けなかった」というように、約束を破ったり、嘘をついたりして得た同意は、有効な同意とは言えません。

政府広報オンラインでも、性的同意とは「性的な行為に対して、お互いの気持ちをしっかり確認しあうこと」であり、配偶者や交際相手であっても同様に同意が必要だと説明されています。

1-2. 「なんとなく」は危険!同意があったとは言えないケース

では、具体的にどのような状況が「同意がない」と見なされるのでしょうか。自分では「合意の上だ」と思っていても、法的に、そして倫理的に問題となるケースは数多く存在します。

  • 沈黙や無抵抗:「イヤ」と言われなかったからOK、ではありません。恐怖で声が出なかったり、体が凍りついて動けなかったりする「凍りつき反応(フリーズ)」という状態もあります。
  • 酩酊・泥酔・薬物の影響下:お酒や薬物の影響で、正常な判断ができない状態の人から得た「同意」は無効です。 相手を酔わせて判断能力を奪うことは、極めて悪質な行為です。
  • 睡眠中・意識不明:眠っている、あるいは気絶している相手に性的な行為をすることは、言うまでもなく性暴力です。
  • 力関係の濫用:上司と部下、教師と生徒、先輩と後輩など、立場上「NO」と言いにくい関係性を利用して性的な行為を強いることは、同意があったとは言えません。
  • 繰り返し・しつこい要求:相手が一度断ったにもかかわらず、「お願いだから」「なんでダメなの?」としつこく要求して根負けさせて得た承諾は、自発的な同意ではありません。
  • 過去の同意の流用:「前はOKだったから、今日もOKだろう」という思い込みは危険です。 その日の気分や状況は毎回違います。交際中や夫婦間であっても、性的な行為には毎回同意が必要です。

福岡県の啓発サイトでは、「二人きりで食事に行くということは、性行為してもいいんだと思った」「キスをしたので性行為もしていいと思った」といった思い込みは誤りであり、言葉ではっきり確認する必要があると呼びかけています。

1-3. どうやって同意をとるの?―大切なのは対話

「じゃあ、いちいち全部言葉で聞かなきゃいけないの?雰囲気が壊れる」と思うかもしれません。しかし、性的同意の確認は、決してムードを壊すものではなく、むしろ二人の信頼関係を深め、より安心して楽しむための大切なコミュニケーションです。

  • 言葉で聞く:「キスしてもいい?」「触ってもいい?」「続けても大丈夫?」と、シンプルに言葉で尋ねることが最も確実です。
  • 相手の反応をみる:言葉だけでなく、相手が本当に楽しんでいるか、表情や仕草をよく観察しましょう。相手が体をこわばらせたり、視線をそらしたりしたら、それは「NO」のサインかもしれません。一度、動きを止めて「大丈夫?」と確認する優しさが大切です。
  • 自分の気持ちも伝える:自分が何をしたいか、どう感じているかを正直に伝えることも、相手が意思表示をしやすくなる助けになります。

大切なのは、「NO」の可能性を常に念頭に置き、「NO」と言われても相手を責めたり不機嫌になったりせず、あっさりと受け入れる姿勢です。その安心感が、「言っても大丈夫なんだ」という信頼に繋がります。

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第2章:性暴力・性加害とは何か?―その定義と見えにくい実態

性的同意のない性的な行為は、すべて「性暴力」であり「性加害」です。この章では、その定義と、社会に根深く存在する問題の実態について掘り下げていきます。

中年の男女

2-1. 性暴力・性加害の広い定義

一般的に「性暴力」と聞くと、レイプ(強姦)のような激しい暴力を伴うものを想像するかもしれません。しかし、性暴力の定義はもっと広く、以下のような行為がすべて含まれます。

  • 身体的な性暴力
    • 同意のない性交、オーラルセックス、アナルセックスなど
    • 痴漢、盗撮、無理やりキスをする、体を触る
    • 避妊に協力しない、同意なくコンドームを外す(ステルシング)
  • 心理的・社会的な性暴力
    • 性的な冗談や噂話を流す(セクシュアル・ハラスメント)
    • 性的な写真や動画を本人の許可なく撮影・拡散する(リベンジポルノなど)
    • 性的指向や性自認を本人の許可なく他者に暴露する(アウティング)
    • 性的な関係を強要する(デートDV、夫婦間での性暴力)
    • ポルノへの出演を強要する(AV出演強要問題)

つまり、相手が望んでいない、相手の尊厳を傷つけるあらゆる性的な言動が「性暴力」なのです。そして、それを行うことが「性加害」です。

2-2. 2023年刑法改正―「不同意性交等罪」の新設

こうした実態を踏まえ、日本の法律も大きく変わりました。2023年7月13日に施行された改正刑法では、これまでの「強制性交等罪」「準強制性交等罪」が一本化され、「不同意性交等罪」が新設されました。

この改正の最大のポイントは、処罰の根拠が「暴行・脅迫」から「同意がないこと」に明確にシフトしたことです。

法律では、以下の8つの原因により、相手が「同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態」になっていることに乗じて性交などを行うと、罪に問われることが明記されました。

  1. 暴行または脅迫を用いること
  2. 心身の障害を生じさせること
  3. アルコールまたは薬物を摂取させること
  4. 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること
  5. 同意しない意思を表明する時間的・心理的いとまを与えないこと
  6. 恐怖・驚愕させること
  7. 虐待に起因する心理的反応
  8. 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること

これにより、これまで罪に問いにくかった「上司だから逆らえなかった」「恐怖で体が動かなかった」といったケースも、明確に処罰の対象となったのです。

また、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられたことも大きな変更点です。原則として16歳未満の者と性交などをした場合は、たとえ相手の同意があるように見えても、この罪が適用されることになります。(※13~15歳の場合は、行為者が5歳以上年長の場合に限る)

2-3. 日本における性暴力の驚くべき実態

「性暴力は、自分とは遠い世界の話」そう思っていませんか?しかし、内閣府などの調査結果は、それが決して他人事ではないことを示しています。

  • 被害経験:内閣府の調査(令和2年度)によると、女性の約14人に1人、男性の約67人に1人が、無理やりに性交等された被害経験があると回答しています。
  • 加害者との関係:同調査で、無理やり性交等された被害の加害者は「知っている人」が大多数を占めます。「全く知らない人」は1割程度に過ぎず、「交際相手・元交際相手」「配偶者・元配偶者」「職場の関係者」などが上位に挙がっています。
  • 相談しない被害者:性暴力の被害について、女性の約6割、男性の約7割が誰にも相談していないというデータもあります。 被害を打ち明けられない背景には、「自分が悪いと思ってしまった」「恥ずかしくて言えなかった」「信じてもらえないと思った」といった、被害者の心に重くのしかかる負担があります。
  • 若年層の被害:特に若年層の被害は深刻で、強制性交等罪の認知件数において、被害者が20代以下のケースが8割以上を占めています。

これらのデータが示すのは、性暴力が非常に身近な場所で、見えにくい形で発生しているという事実です。安全だと思っていた関係性の中にこそ、危険が潜んでいる可能性があるのです。

第3章:なぜ「性的同意」がこれほどまでに重要なのか?

ここまで、性的同意の定義と性暴力の実態を見てきました。では、なぜ今、社会全体で「性的同意」の考え方を共有することが、これほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、大きく3つあります。

そっぽを向く男女

3-1. 個人の尊厳と自己決定権を守るため

最も根本的な理由は、私たち一人ひとりが持つ「個人の尊厳」と「性的自己決定権」を守るためです。

性的自己決定権とは、「いつ、誰と、どのような性的な関係を持つか(あるいは持たないか)を、自分自身の意思で自由に決める権利」のことです。この権利は、年齢、性別、性的指向、婚姻状況、障がいの有無などに関わらず、すべての人に平等に保障されています。

性的同意は、この自己決定権を尊重するための具体的なアクションです。相手の意思を確認せずに性的な行為に及ぶことは、相手の尊厳を踏みにじり、心と身体を深く傷つける行為に他なりません。

3-2. 性暴力・性加害の根本的な予防策となるから

「NO」と言える社会を作ることも大切ですが、それ以上に「そもそも同意なく手を出さない」社会を築くことが、性暴力問題の根本的な解決に繋がります。

性的同意の考え方が社会の常識となれば、「相手も喜んでいるはずだ」「このくらいは許されるだろう」といった、加害に繋がりかねない一方的な思い込みや勘違いを防ぐことができます。

加害者の多くは、「自分は悪いことをしている」という認識がないまま、相手を傷つけてしまっているケースが少なくありません。性的同意を学ぶことは、意図せず加害者になってしまうリスクから、自分自身を守ることにも直結するのです。

3-3. 良好で対等な人間関係の土台となるから

性的同意の考え方は、性的な関係に限らず、すべての人間関係に応用できるコミュニケーションの基本です。

  • 相手の意思を尊重する
  • 自分の思い込みで判断しない
  • 言葉で確認し、対話する
  • 相手が「NO」と言える安心感を育む

これらの態度は、友人、家族、同僚など、あらゆる人との間で、信頼に基づいた良好な関係を築くための土台となります。相手を一人の人間として尊重し、その境界線(バウンダリー)を大切にする姿勢は、あなたの人間関係をより豊かで健全なものにしてくれるでしょう。

第4章:自分は大丈夫? 加害者にならないためのチェックリスト

「自分は絶対に加害者になんてならない」と多くの人が思っています。しかし、知識不足や無自覚な思い込みが、取り返しのつかない事態を引き起こすことがあります。ここでは、自分自身が加害の当事者にならないために、常に心に留めておくべきことをチェックリスト形式でまとめました。

ノートとペン

【加害者にならないための思考チェック】

  • □ 「イヤよイヤよも好きのうち」という言葉を信じている
  • □ 相手が黙っているのは、同意しているからだと思うことがある
  • □ 恋人や夫婦なのだから、いつでもセックスして良いと思っている
  • □ 食事やデートに付き合ってくれたのだから、体の関係も期待してしまう
  • □ 相手の服装が露出度が高いと、「誘っている」と感じてしまう
  • □ 一度断られても、粘り強く説得すれば相手の気持ちは変わると思っている
  • □ お酒を飲ませれば、相手も大胆になって受け入れてくれると考えている
  • □ 自分が相手より立場が上(先輩、上司など)であることを、無意識に利用していないか
  • □ 相手の「NO」に対して、不機嫌になったり、理由をしつこく聞いたりしたことがある
  • □ 性的な話題を、相手が嫌がっているのに続けたことがある

もし、一つでも「はい」と答えた項目があれば、あなたの認識は危険な兆候をはらんでいます。 これらの考え方は、すべて性的同意の原則に反する、加害に繋がりやすい危険な思い込みです。

【加害者にならないための行動原則】

  1. 「YES」だけが同意だと心得る:「NO」と言わないからOK、ではありません。「YES」という積極的な意思表示があって初めて、同意が成立します。言葉、表情、態度から、相手の「YES」を真摯に受け止めましょう。
  2. 言葉での確認を習慣にする:「~してもいい?」と聞くことは、相手を尊重する態度の表れです。これは義務ではなく、より良い関係のための思いやりです。
  3. 相手の「NO」を尊重し、受け入れる:「NO」と言われたら、それ以上は踏み込まない。理由を問いただしたり、不機嫌になったりするのは、相手にプレッシャーを与える行為です。「そっか、わかった」と笑顔で受け入れる姿勢が、次からのコミュニケーションを円滑にします。
  4. アルコールの力を借りない:お酒は判断能力を鈍らせます。 相手を酔わせて同意を得ようとすることは、不同意性交等罪に問われる可能性のある極めて悪質な行為です。相手が酔っている場合は、性的な行為は絶対に避けるべきです。自分自身も、酔っているときは相手の意思を正しく判断できない可能性があることを自覚しましょう。
  5. 対等な関係を意識する:職場や学校など、力関係が存在する場では、特に慎重な配慮が求められます。自分の立場が、相手にとって「NO」と言いづらいプレッシャーになっていないか、常に自問自答する必要があります。
  6. 継続的に学ぶ:性的同意に関する知識は、一度学んで終わりではありません。新しい情報に触れ、自分の考えをアップデートし続けることが重要です。

第5章:もしも被害に遭ってしまったら… あなたは決して悪くない

この章は、今まさに被害に遭って苦しんでいる方、過去の経験に悩んでいる方、そして、自分の身を守りたいすべての方に向けて書いています。最も強く伝えたいことは、「あなたが悪いことは、何一つない」ということです。

カウンセラーとの対話

5-1. 被害者の心に起こること―「セルフブレーム」の罠

性暴力の被害に遭うと、多くの人が自分を責める「セルフブレーム」に陥ります。

  • 「あの時、もっとはっきり断ればよかった」
  • 「あんな服装をしていたからだ」
  • 「二人きりになった自分が軽率だった」

しかし、これらはすべて間違いです。悪いのは100%、性的同意なく加害行為に及んだ相手であり、被害者には一切の責任はありません。どのような状況であれ、服装であれ、時間帯であれ、同意のない性的な行為を正当化する理由は存在しません。

自分を責める気持ちは、加害者によって植え付けられた「呪い」のようなものです。あなたは、その呪いから自分を解放してあげる必要があります。

5-2. まず、あなたにしてほしいこと―安全の確保と相談

もし、あなたが被害に遭ってしまったら、あるいは、過去の被害に今も苦しんでいるのなら、どうか一人で抱え込まないでください。あなたには、助けを求める権利があります。

  1. 身の安全を確保する:まず、加害者から離れ、安全な場所に移動してください。信頼できる友人、家族、あるいは警察に連絡しましょう。
  2. 証拠を残す(可能であれば):もし警察への届出を少しでも考えているなら、着ていた服をビニール袋に入れて保管したり、シャワーを浴びずにいたり、メッセージのやり取りを消さずに残しておいたりすることが、後の証拠になる場合があります。しかし、心身の安全が最優先です。無理は絶対にしないでください。
  3. 専門の相談窓口に電話する:今すぐ誰かに話を聞いてほしい、どうすればいいか分からない。そんな時は、ためらわずに専門の相談窓口に電話してください。

5-3. あなたの味方になる相談窓口リスト

日本には、性暴力被害者を支援するための専門機関がいくつもあります。匿名で、無料で相談でき、あなたの秘密は固く守られます。

  • 性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
    • 全国共通短縮ダイヤル:#8891(はやくワンストップ)
    • 電話をかけると、あなたのいる場所から最も近い支援センターに繋がります。
    • 産婦人科での診察やカウンセリング、法律相談、警察への同行支援など、必要なサポートを一つの場所で(ワンストップで)提供してくれます。24時間365日対応している窓口も多くあります。
  • 性犯罪被害相談電話(警察)
    • 全国共通短縮ダイヤル:#8103(ハートさん)
    • 「すぐに警察に相談したい」「事件として捜査してほしい」という場合に繋がる専門の相談電話です。24時間対応しています。
  • Cure Time(キュアタイム)
    • 内閣府が運営する、性暴力に関するSNSチャット相談です。「電話で話すのは抵抗がある」という方でも、チャット形式で専門の相談員に相談できます。

これらの相談窓口では、専門の訓練を受けた相談員が、あなたの気持ちに寄り添いながら、あなたがどうしたいかを第一に考えて、一緒にこれからできることを考えてくれます。「警察に言うべきか迷っている」「ただ話を聞いてほしい」という段階でも、全く問題ありません。

あなたのペースで、あなたにとって一番良いと思える道を、専門家が一緒に探してくれます。どうか、その手を掴んでください。

第6章:傍観者でいないために。社会全体で取り組むべきこと

性的同意が当たり前の社会を築くためには、私たち一人ひとりが当事者意識を持つことが不可欠です。この章では、社会の一員として、私たちに何ができるかを考えます。

6-1. 「包括的性教育」の重要性

性暴力や意図しない妊娠などから子どもたちを守るためには、科学的根拠に基づいた「包括的性教育」が不可欠です。

包括的性教育とは、単に体の仕組みや避妊法を教えるだけでなく、

  • 人権の尊重
  • ジェンダーの平等
  • 多様な性のあり方
  • そして、性的同意

といった、人間関係のスキルを総合的に学ぶ教育です。幼い頃から、自分の体も相手の体も大切にすること、お互いの意思を尊重すること、そして「NO」と言っていいし、言われたらやめることを学ぶ機会が必要です。家庭や学校、地域社会が連携し、子どもたちが年齢に応じて正しい知識を身につけられる環境を整えることが、未来の加害者も被害者も生まないための最も効果的な投資と言えるでしょう。

6-2. 日常会話やメディアの表現に敏感になる

  • 「あの子は軽いから大丈夫」といった性的な決めつけ
  • 被害者を責めるような言説(「脇が甘かったんじゃない?」など)
  • 性暴力を矮小化したり、笑いのネタにしたりするコンテンツ

こうした言動は、性暴力を容認する空気(レイプ・カルチャー)を社会に作り出してしまいます。私たちは、日常生活の中でこうした表現に触れた時に、「それはおかしい」「同意のない行為は暴力だよ」と指摘する勇気を持つ必要があります。

6-3. バイスタンダー(傍観者)介入のススメ

もし、友人が恋人の愚痴として「断ってるのに、しつこく迫られて困る」と話していたら? もし、飲み会で誰かが無理やりお酒を飲まされそうになっていたら?

そんな時、見て見ぬふりをするのではなく、安全な形で介入する「バイスタンダー介入」が、被害を未然に防ぐ力になります。

  • 直接介入する:「おい、やめなよ」「本人が嫌がってるじゃないか」と直接声をかける。
  • 気をそらす:「あ、〇〇さんから電話だよ」と話をそらしたり、「ちょっとこっち手伝って」と当事者を引き離したりする。
  • 他の人に助けを求める:「ちょっと今の状況、まずくないですか?」と周りの人に同意を求めたり、お店の人や権威のある人(上司など)に助けを求めたりする。
  • 後で声をかける:その場では何もできなくても、後から被害を受けていた可能性のある人に「大丈夫だった?」「何かあったら聞くよ」と声をかける。

一人ひとりが「自分にできることは何か」を考え、行動することが、社会全体の安全網を築くことに繋がります。

夜明けの空

おわりに:知識を力に、より良い未来へ

「性的同意」という概念は、誰かを裁くためのものではなく、私たち一人ひとりが、より安全で、より対等で、より尊重し合える人間関係を築くための、ポジティブなツールです。

この記事で得た知識が、あなたにとって、そしてあなたの周りの大切な人たちにとって、心と身体を守るための”お守り”となることを心から願っています。

性暴力のない社会は、決して夢物語ではありません。私たちが今日、ここで学んだことを忘れず、日々の生活の中で実践し、そして、まだこの知識を知らない誰かに伝えていくこと。その一つ一つの小さな行動が、必ず社会をより良い方向へと動かしていくはずです。

もし、あなたがこの記事を読んで、誰か特定の人の顔を思い浮かべたなら、ぜひこの記事をシェアしてください。あなたのその行動が、誰かの未来を救う一助になるかもしれません。

今日この瞬間から、性的同意が当たり前の社会を、一緒につくっていきましょう。

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