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犯罪加害者家族が抱える心理とは|罪悪感や恥の感情、周囲からの偏見などの苦しみの正体と孤立させないための支援

窓辺でうつむく人
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はじめに

ある日突然、家族の誰かが逮捕される。テレビのニュースやインターネットのニュースサイトに実名や住所が晒され、近隣住民や職場、学校からの視線が一変する——。犯罪の「加害者家族」は、被害者でも加害者でもないにもかかわらず、社会から強いスティグマ(偏見・烙印)を向けられ、深刻な心理的ダメージを負うことが知られています。

日本で初めて犯罪加害者家族への支援を専門に行うNPO法人World Open Heartは、2008年の設立以来、全国から2000件を超える相談を受けてきました。相談内容の多くは殺人・放火・性犯罪といった重大事件に関するもので、そのうち約4割は家族内で起きた事件だといいます。つまり加害者家族は、身内の犯罪によって「被害者」であると同時に、社会からは「加害者側」として扱われるという、極めて複雑な立場に置かれるのです。

本記事では、加害者家族が経験する心理的プロセスを、罪悪感・恥・スティグマの内在化・喪失感といった観点から整理し、実際に活動している支援団体や相談窓口の情報とあわせて解説します。ご自身やご家族が同じような状況にある方はもちろん、周囲でそうした立場の人を支えたいと考えている方にも役立つ内容を目指しました。

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1. 「加害者家族」とはどのような存在か

スマートフォンに映る家族

加害者家族とは、犯罪の加害者となった人の配偶者、親、子ども、きょうだいなど、血縁や婚姻・生活を共にする関係にある人々を指します。加害者本人が罪を犯した事実は変わらなくても、家族自身が罪を犯したわけではありません。それにもかかわらず、日本社会には「家族は連帯して責任を負うべきだ」という根強い意識があり、加害者家族は事件と同時に、以下のような具体的な不利益に直面することが少なくありません。

  • 実名報道やSNSでの拡散による社会的な特定
  • 自宅や職場、学校への取材(メディアスクラム)
  • 近隣住民や親戚からの冷淡な対応、絶縁
  • 転居・転職・退学を余儀なくされる
  • 被害者側への謝罪や損害賠償への対応(平均で数百万円規模になることもある)
  • 加害者本人との関係の再構築、または断絶の選択

海外では犯罪加害者家族への支援制度や研究が比較的進んでいる国もありますが、日本では2004年に犯罪被害者等基本法が成立し被害者支援の枠組みが整備される一方、加害者家族に光が当てられる機会はいまも限られています。近年になってようやく、弁護士会や大学の研究機関、NPOなどが少しずつ支援の輪を広げている段階です。

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2. 加害者家族が抱える心理的影響

悩んでいる家族

加害者家族の心理は、単一の感情では説明できません。時間の経過とともに複数の感情が重なり合い、揺れ動いていくのが特徴です。ここでは代表的な心理的反応を5つの観点から見ていきます。

2-1. 罪悪感・自責の念

「自分の育て方が悪かったのではないか」「あのとき気づいてあげられなかったのか」——多くの加害者家族は、事件そのものへの罪悪感とは別に、加害者を「止められなかったこと」への自責の念を強く抱きます。特に親や配偶者など、加害者と近い関係にあった人ほどこの傾向が強く現れやすいといわれています。

この自責の感情は、加害者本人が服役中であっても、出所後であっても長く続くことがあり、家族自身が十分な休息や助けを求めることを妨げる要因にもなります。「自分にはつらいと感じる資格がない」と考えてしまい、心身の不調を我慢し続けてしまうケースも報告されています。

2-2. 恥の感情とスティグマの内在化

加害者家族の心理を語るうえで欠かせないのが「恥(シェイム)」の感情です。社会学者レイチェル・コンドリーは、加害者家族が経験する恥の感情を「恥の網の目(web of shame)」という概念で説明しています。日本国内の研究でも、加害者家族が恥を感じる要因は、犯罪の重さそのものよりも、事件の前後で自分が社会の中でどのような立ち位置に置かれるようになったか、その落差を認識することによって強く生じることが指摘されています。

つまり、事件前は「ごく普通の家庭」として周囲と対等な関係を築けていたのに、事件後は一転して「犯罪者の家族」というレッテルを貼られ、対等な関係が崩れてしまう。この落差こそが、深い恥の感情を生み出す大きな要因になっているのです。

さらに深刻なのは、こうした恥の感情が本人の中に「内在化」されてしまう現象です。周囲から偏見の目を向けられ続けることで、家族自身が「自分たちは恥ずべき存在だ」「後ろ指をさされて当然だ」と思い込むようになり、自己肯定感の著しい低下、うつ的な症状、外出や対人交流を避ける生活へとつながっていくことがあります。この負のスパイラルは、精神疾患をめぐるスティグマ研究でも共通して指摘される構造であり、加害者家族に限らず「差別を受ける立場に置かれた人」に広く見られる心理的メカニズムです。

2-3. 二次的被害(メディアスクラムと誹謗中傷)

加害者家族は、事件そのものによる衝撃に加えて、周囲の反応によって生じる「二次的被害」にも苦しめられます。具体的には以下のようなものです。

  • 報道機関やインターネット上での過剰な取材・書き込み
  • 「あの家族の育て方が悪かったのだろう」といった根拠のない決めつけ
  • SNS上での個人情報の拡散、誹謗中傷
  • 職場や学校からの実質的な退職・退学勧奨

これらは、加害者家族が「自分には何の落ち度もないのに、なぜここまで責められるのか」という強い不条理感を抱く原因になります。犯罪被害者支援の分野では、周囲の何気ない言動によって被害者が傷つけられる現象を二次的被害と呼びますが、加害者家族もまた、構造的によく似た二次的被害を受けやすい立場にあるといえます。

2-4. 家族関係の変化と喪失感

事件をきっかけに、家族の形そのものが大きく変わってしまうことも少なくありません。加害者本人との関係を続けるべきか、距離を置くべきかという葛藤、夫婦間での意見の対立による離婚、きょうだい間の関係悪化など、家族というシステム全体が揺さぶられます。

また、事件前に思い描いていた将来設計(子どもの進学、住まい、仕事のキャリアなど)を諦めざるを得なくなることも多く、これは「あいまいな喪失(ambiguous loss)」と呼ばれる、はっきりとした死別ではないのに大切なものを失ったような感覚に近いといえます。加害者が生きているにもかかわらず、これまでの関係性や日常、将来像そのものが失われてしまうという特殊な喪失体験が、加害者家族の心理を複雑にしています。

2-5. 子どもへの影響

加害者の子ども、あるいは加害者のきょうだいである子どもたちも、大人と同じように、あるいはそれ以上に深刻な影響を受けます。転校を余儀なくされたり、周囲の大人から心無い言葉を向けられたりすることで、自己肯定感の形成に影響が及ぶことがあります。また、幼い子どもの場合、何が起きたのかを十分に理解できないまま、周囲の異様な空気や親の変化だけを感じ取り、不安や情緒の不安定さとして表れることもあります。加害者家族を支援する団体の多くが、こうした子どもへの個別支援やケアを重要な活動の柱として位置づけています。

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3. 心理的反応の時間的な経過

窓の外を眺める男性

加害者家族の心理は、事件発生からの時間経過によっても変化していきます。ここでは大まかな4つの段階に分けて整理します。

3-1. 逮捕直後(急性期)

事件の発覚や逮捕の知らせを受けた直後は、強いショックと混乱の中に置かれます。「何かの間違いではないか」という否認の感情や、現実感の喪失(茫然自失の状態)が生じやすく、同時にメディア対応や警察・弁護士とのやり取りなど、現実的な対応にも追われるため、感情を整理する余裕がほとんどありません。

3-2. 捜査・裁判の期間

取り調べの経過や裁判の進行を見守る期間は、先の見えない不安と緊張が続きます。この時期には、被害者やその遺族への謝罪をどう行うか、示談や損害賠償にどう向き合うかといった現実的な課題にも直面します。加害者との面会(接見)を続けるかどうかという判断も、家族にとって大きな心理的負担となります。

3-3. 服役期間

判決が確定し加害者が服役を始めると、周囲の関心は一時的に落ち着くこともありますが、家族の中では「これからどう生活を立て直すか」という長期的な課題と向き合う時期に入ります。経済的な立て直し、住まいの確保、周囲との関係の再構築など、地道な取り組みが必要になります。

3-4. 出所後

加害者が出所した後は、再び新たな緊張が生まれます。加害者の社会復帰をどう支えるか、再犯を防ぐためにどのような環境を整えるか、家族自身の生活とのバランスをどう取るかなど、複合的な課題に向き合う必要があります。支援団体の多くが、出所後の家族の受け入れ態勢を整えることが、加害者本人の更生や再犯防止、ひいては被害者への誠実な償いにつながると位置づけています。

4. 加害者家族が孤立しやすい社会的な構造

かたずけられない女性

加害者家族が孤立しやすい背景には、個人の心の弱さではなく、社会構造上の要因が大きく関わっています。

第一に、被害者支援と比較して、加害者家族を対象とした公的な支援制度がほとんど整備されていないという現実があります。犯罪被害者等基本法のような法整備が加害者家族には存在せず、相談先を自力で探さなければならない状況が続いています。

第二に、「連座」的な意識、すなわち家族は加害者と一体であり連帯して責任を負うべきだという社会的な価値観が根強く残っていることが挙げられます。この意識が、加害者家族への風当たりを強くする一因になっています。

第三に、加害者家族自身が「相談することへの恥」を感じ、支援を求める行動そのものにブレーキがかかってしまうという心理的な壁があります。前述したスティグマの内在化がここでも影響し、「助けを求めれば、さらに自分たちの存在が知られてしまう」という恐れから、孤立を深めてしまう悪循環が生じやすいのです。

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5. 加害者家族の心理的ケアと対処法

カウンセリング

加害者家族の心理的な負担を少しでも軽くするためには、専門的な支援と、周囲の理解の両方が欠かせません。

5-1. 専門家によるカウンセリング

臨床心理士や公認心理師などの専門家によるカウンセリングは、罪悪感や恥の感情を安全な場で言葉にし、整理していくうえで有効です。加害者家族支援に関する専門書では、心理療法の専門家が家族の心理的ケアに関わることの重要性とあわせて、加害者本人の更生というニーズから見た家族への心理的支援や、家族同士によるピアカウンセリングのあり方についても検討がなされています。専門家に相談することは、決して特別なことではなく、心の負担を専門的に扱う一つの選択肢として捉えることが大切です。

5-2. ピアサポート・自助グループ

同じ立場を経験した人同士が体験を分かち合う「ピアサポート」も、加害者家族にとって大きな支えになります。専門家に話すのとはまた違い、「同じ経験をした人にしかわからない」感覚を共有できることは、孤立感を和らげるうえで重要な役割を果たします。加害者家族の会のような自助グループを運営する団体もあり、こうした場を通じて少しずつ自分の状況を客観視できるようになったという声も少なくありません。

5-3. 支援団体・専門機関の活用

一人、あるいは家族だけで問題を抱え込まず、早い段階で専門の支援団体や弁護士に相談することも重要です。特に、メディア対応や被害者への謝罪、賠償に関する対応など、法的な知識が必要な場面では、加害者家族の状況に理解のある弁護士や支援団体のサポートを受けることで、二次的被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。

6. 相談できる支援団体・窓口の例

電話対応

ここでは、実際に加害者家族への支援を行っている主な団体・窓口を紹介します(掲載情報は変更される場合があるため、利用の際は必ず各団体の公式サイト等で最新情報をご確認ください)。

  • NPO法人World Open Heart:2008年に日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援活動を開始した団体。宮城県仙台市を拠点に、電話・面談での相談、警察署や刑事施設・裁判所への同行支援、被害者側への謝罪同行のアドバイス、転居先探しのサポートなどを行っています。相談は原則無料で、全国からの相談に対応しています。
  • 山形県弁護士会 犯罪加害者家族支援センター:弁護士会が設置した加害者家族専門の相談窓口。法律面から加害者家族を支える取り組みとして注目されています。
  • NPO法人スキマサポートセンター:大阪を拠点に活動する加害者家族支援団体。
  • 大学の研究機関:鹿児島大学司法政策教育研究センターなど、加害者家族に関する調査・研究を進める学術機関もあり、支援のあり方を検討する動きが全国に広がりつつあります。
  • 法テラス(日本司法支援センター):経済的な事情で弁護士に相談しづらい場合に、法的トラブルの解決に向けた案内や無料法律相談の窓口を紹介してくれる公的機関です。
  • よりそいホットライン/こころの健康相談統一ダイヤル:加害者家族に限定した窓口ではありませんが、心の負担が大きくつらいと感じるとき、誰でも無料・匿名で相談できる公的な相談ダイヤルです。事件の話をする必要はなく、「つらい」という気持ちだけでも相談してよい窓口です。

もし今、強い孤立感やつらさを感じている方がいれば、一人で抱え込まず、上記のような窓口に「話を聞いてもらう」というだけでも構いませんので、連絡してみることをおすすめします。

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7. 周囲の人ができるサポート

加害者家族が孤立しないためには、専門的な支援だけでなく、身近な人々の関わり方も大きな影響を与えます。

  • 詮索しすぎない:事件の詳細を根掘り葉掘り聞くことは、当事者にとって大きな負担になります。話したいときに話せる関係性を保つことが大切です。
  • 決めつけない:「家族なのだから知っていたはずだ」「育て方が悪かったのだろう」といった決めつけは、当事者を深く傷つけます。加害者家族もまた、事件によって大きな衝撃を受けた当事者であるという視点を持つことが重要です。
  • 日常のつながりを断ち切らない:あいさつを交わす、これまで通り接するといった、ささやかな日常のつながりが、孤立を防ぐ大きな力になります。
  • 専門機関につなぐ:身近な人が深刻に思い詰めている様子が見られる場合には、無理に自分だけで抱え込ませず、前述したような相談窓口の存在をそっと伝えることも助けになります。

よくある質問(FAQ)

質問・疑問

Q1. 加害者家族は法律上、何か責任を問われるのですか?

A. 家族が事件そのものに関与していない限り、法律上の刑事責任を問われるわけではありません。ただし、監督義務の有無や民事上の損害賠償責任が問題となるケースもあるため、個別の状況については弁護士に相談することが望まれます。

Q2. 加害者家族が精神的に不安定になった場合、家族だけで対応すべきですか?

A. 家族だけで抱え込む必要はありません。強い自責感や不眠、気分の落ち込みが続く場合は、医療機関や公認心理師などの専門家、あるいは前述の相談窓口を頼ることが望まれます。特に「消えてしまいたい」といった気持ちが強くなっている場合は、早めに専門機関やホットラインに連絡することが大切です。

Q3. 子どもへの影響を最小限にするために家庭でできることはありますか?

A. 子どもの年齢に応じて、わかる範囲で誠実に説明すること、学校や周囲との関係で困っていることがないか丁寧に確認すること、そして必要に応じてスクールカウンセラーや子ども向けの支援窓口を活用することが助けになります。

Q4. 支援団体に相談すると、周囲に知られてしまう心配はありませんか?

A. 多くの支援団体は相談者のプライバシー保護を前提に活動しており、匿名での相談を受け付けている窓口もあります。不安な場合は、相談時にプライバシー保護の方針について確認するとよいでしょう。

風景

まとめ

犯罪加害者家族は、罪を犯したわけではないにもかかわらず、罪悪感、恥の感情、周囲からのスティグマ、家族関係の喪失感など、幾重にも重なる心理的な負担を抱えています。これらの心理は、事件直後から出所後に至るまで、時間の経過とともに姿を変えながら続いていくものであり、「もう一人の当事者」として社会的な理解と支援が必要とされています。

一人で、あるいは家族だけで抱え込まず、専門家によるカウンセリングやピアサポート、支援団体の力を借りることは、決して弱さの表れではありません。むしろ、家族が安定を取り戻すことは、加害者本人の更生や再犯防止、そして被害者への誠実な償いを続けていく環境づくりにもつながっていきます。周囲の人々が偏見や決めつけを手放し、日常的なつながりを保ち続けることもまた、加害者家族を孤立から守る大きな力になるはずです。

なお、本記事は精神医学的な診断や個別の心理状態を判断するものではありません。強いつらさが続く場合や、ご自身やご家族の安全に不安がある場合は、早めに医療機関や公的な相談窓口にご連絡ください。

参考

  • NPO法人World Open Heart(阿部恭子理事長、2008年設立)公式サイトおよび関連報道
  • 阿部恭子編著『加害者家族支援の理論と実践――家族の回復と加害者の更生に向けて』(現代人文社)
  • 阿部恭子著『息子が人を殺しました――加害者家族の真実』『家族という呪い――加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書)
  • レイチェル・コンドリー(Rachel Condry)による「恥の網の目(web of shame)」概念、および国内の加害者家族スティグマ研究
  • 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所によるスティグマに関する解説
  • 警察庁関連資料「犯罪被害者等が受ける二次的被害とは」(二次的被害の心理メカニズムに関する参考情報)

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