【完全ガイド】心理的安全性とは?成功するチームの作り方、高める方法7選、測定法まで徹底解説

多様な人々が参加する会議

「なぜ、うちのチームは生産性が上がらないのだろう?」
「会議で誰も意見を言わない…」
「若手や優秀な人材がすぐに辞めてしまう…」

もしあなたが経営者、管理職、あるいはチームリーダーとして、このような悩みを抱えているなら、その根本原因は「心理的安全性の欠如」にあるのかもしれません。

近年、ビジネス界で大きな注目を集める「心理的安全性」。しかし、その言葉だけが一人歩きし、「単なる仲良しチーム」「ぬるま湯組織」といった誤解も少なくありません。

この記事では、心理的安全性の提唱者であるエイミー・エドモンドソン教授の定義や、Googleが巨額の費用を投じて見つけ出した「成功するチームの唯一の共通点」を元に、心理的安全性の本質を徹底的に解き明かします。

さらに、記事の後半では、明日からあなたのチームで実践できる「心理的安全性を高める具体的な7つの方法」や、チームの状態を可視化する測定方法まで、網羅的に解説します。

この記事を最後まで読めば、あなたは以下の状態になれるはずです。

  • 心理的安全性の本当の意味と、それがなぜ重要なのかを明確に理解できる。
  • 自社のチームの課題を「心理的安全性」の観点から分析できる。
  • 成果を出し、イノベーションを生み出すチーム作りのための具体的な第一歩を踏み出せる。

生産性の高い、活気あるチーム作りは、特別な才能や魔法の杖によって実現するものではありません。それは、誰もが安心して挑戦し、健全に意見を戦わせられる「土台」を、意図的に作り上げることから始まるのです。さあ、未来を創る組織の「OS」を手に入れる旅を始めましょう。

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  1. 第1章:心理的安全性とは?基本の「き」を徹底解説
    1. 心理的安全性の定義と提唱者エイミー・エドモンドソン
    2. Googleが証明した「成功するチーム」の唯一の共通点
    3. 【最重要】心理的「安全性」と「ぬるま湯」の決定的な違い
  2. 第2章:心理的安全性がもたらす5つの絶大なメリット
    1. メリット1:チームの生産性向上
    2. メリット2:イノベーションの創出
    3. メリット3:従業員エンゲージメントの向上
    4. メリット4:離職率の低下と人材定着
    5. メリット5:迅速な問題発見とコンプライアンス強化
  3. 第3章:心理的安全性が低い職場の末路【デメリット・リスク】
    1. デメリット1:「サイレントな退職」が蔓延する
    2. デメリット2:不正やミスの隠蔽が常態化する
    3. デメリット3:メンタルヘルスの悪化と休職者の増加
    4. デメリット4:優秀な人材から真っ先に去っていく
  4. 第4章:【超実践編】明日からできる!心理的安全性を高める7つの方法
    1. 方法1:リーダー自らが「弱さ」を見せる(自己開示)
    2. 方法2:メンバーの発言を「傾聴」し「承認」する
    3. 方法3:「無知の知」を表明し、質問を歓迎する文化を作る
    4. 方法4. 失敗を「学習の機会」として捉え、非難しない
    5. 方法5. 建設的な意見対立(コンフリクト)を促す
    6. 方法6. 1on1ミーティングを効果的に活用する
    7. 方法7. チームの共通目標と役割を明確にする
  5. 第5章:チームの心理的安全性を測る方法【質問リスト付き】
    1. エイミー・エドモンドソン教授の「7つの質問」
    2. その他の測定方法
  6. 第6章:リーダー・管理職が陥りがちな心理的安全性の「勘違い」
    1. 勘違い1:「仲が良い」=「心理的安全性が高い」
    2. 勘違い2:「部下の意見を何でも聞く」のが良いリーダーだ
    3. 勘違い3:「一度高めれば、ずっと維持できる」
  7. 第7章:心理的安全性を学ぶためのおすすめリソース
  8. まとめ:心理的安全性は、未来を創る組織の「OS」である

第1章:心理的安全性とは?基本の「き」を徹底解説

まず、この重要なコンセプトの輪郭を正確に捉えることから始めましょう。「心理的安全性」とは、一体何なのでしょうか。

心理的安全性の定義と提唱者エイミー・エドモンドソン

心理的安全性の概念を世界に広めたのは、ハーバード大学経営大学院のエイミー・C・エドモンドソン(Amy C. Edmondson)教授です。

彼女は、自身の著書『恐れのない組織』の中で、心理的安全性を次のように定義しています。

“Team psychological safety is a shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk-taking.”(チームの心理的安全性とは、チームの他のメンバーが、対人関係におけるリスクをとるような行動をしても、誰もが安全であると信じている状態のことである)

簡単に言えば、「このチームの中では、自分の本来の姿でいられる。素朴な疑問を口にしたり、間違いを認めたり、新しいアイデアを提案したりしても、罰せられたり、恥をかかされたり、キャリアに傷がついたりすることはない」と、チームのメンバー全員が自然に感じられている状態のことです。

ここで重要なのは「対人関係のリスク」という言葉です。私たちが職場で働くとき、無意識のうちに以下のようなリスクを恐れています。

  • 無知だと思われるリスク: 「こんな基本的なことを聞いたら、能力が低いと思われるかも…」
  • 無能だと思われるリスク: 「失敗を報告したら、仕事ができないやつだと烙印を押されるかも…」
  • 邪魔をしていると思われるリスク: 「会議で発言したら、議論の流れを妨げてしまうかも…」
  • ネガティブだと思われるリスク: 「改善点を指摘したら、批判的な人間だと思われるかも…」

これらの恐怖は、私たちに「自己防衛」という行動を取らせます。つまり、余計なことは言わず、目立たず、静かにしているのが一番安全だ、という思考に陥ってしまうのです。

心理的安全性が高いチームでは、メンバーがこの「自己防衛」の鎧を脱ぎ捨て、本来持っている能力や創造性を、チームの目標達成のために最大限に発揮できるようになります。

Googleが証明した「成功するチーム」の唯一の共通点

心理的安全性の重要性が世界的に知られるようになった大きなきっかけは、米Google社が2012年から数年間にわたって実施した、「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」という社内調査です。

Googleは、「生産性の高いチームの条件は何か?」を解明するため、180以上のチーム(エンジニアリング部門から営業部門まで)を対象に、膨大なデータ分析を行いました。

当初、彼らは「最高のメンバー(天才的なプログラマーなど)を集めれば、最高のチームになる」といった仮説を立てていました。しかし、分析の結果、チームの成果に大きく影響するのは、「誰がチームにいるか(Who)」よりも、「チームがどのように協力しているか(How)」であることが判明したのです。

そして、数百もの要因を分析した結果、高い成果を出すチームに共通する「5つの成功因子」が特定されました。

【Googleが発見したチームを成功に導く5つの因子】

  1. 心理的安全性 (Psychological Safety): チームの中で、リスクを取ること(例:質問する、アイデアを出す)を安全だと感じられるか。
  2. 相互信頼 (Dependability): チームのメンバーは、お互いに質の高い仕事を時間通りにやり遂げると信頼し合えるか。
  3. 構造と明確さ (Structure & Clarity): チームの役割、計画、目標が明確に定義されているか。
  4. 仕事の意味 (Meaning of Work): 自分の仕事が、自分自身にとって意義があると感じられるか。
  5. 仕事のインパクト (Impact of Work): 自分たちの仕事が、組織や社会に良い影響を与えていると実感できるか。

注目すべきは、Googleが「心理的安全性は、他の4つの因子の土台であり、圧倒的に重要な因子である」と結論づけたことです。心理的安全性がなければ、メンバーは互いを信頼できず、役割や目標も形骸化し、仕事の意味やインパクトを見出すことも困難になります。

つまり、どんなに優秀な人材を集めても、どんなに立派な目標を掲げても、そのチームに心理的安全性がなければ、そのポテンシャルは決して最大限に発揮されることはないのです。

【最重要】心理的「安全性」と「ぬるま湯」の決定的な違い

心理的安全性について語る上で、最もよくある誤解が「心理的安全性=ぬるま湯組織」というものです。

「何でも許される」「誰も叱られない」「ただ仲が良いだけ」… これらは、心理的安全性の本質とは全く異なります。むしろ、真逆と言っても過言ではありません。

この誤解を解くために、エイミー・エドモンドソン教授が提唱する非常に有名なフレームワークを紹介します。それは、「心理的安全性」の高さと、「仕事の基準(目標や責任)」の高さを軸にした4象限のマトリクスです。

1. 不安ゾーン(Anxiety Zone):心理的安全性【低】× 仕事の基準【高】

  • 高い目標や厳しいノルマが課せられているにもかかわらず、質問や相談ができない、失敗が許されない環境。
  • メンバーは常に恐怖や不安を感じ、パワハラやバーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが非常に高い状態です。ミスは隠蔽され、挑戦は生まれません。

2. 無気力ゾーン(Apathy Zone):心理的安全性【低】× 仕事の基準【低】

  • 目標が低く、仕事への要求も緩い上、人間関係もギスギスしている最悪の状態。
  • メンバーは仕事に意味を見出せず、ただ時間が過ぎるのを待つだけ。まさに「サイレントな退職」が蔓延する組織です。

3. 快適ゾーン(Comfort Zone):心理的安全性【高】× 仕事の基準【低】

  • 雰囲気は良く、居心地は良いものの、仕事に対する基準が低く、挑戦や成長が求められない状態。
  • これが、いわゆる「ぬるま湯」です。メンバーは現状維持に満足し、イノベーションや大きな成果は生まれません。仲は良いですが、業績は伸び悩むでしょう。

4. 学習ゾーン(Learning/High-Performance Zone):心理的安全性【高】× 仕事の基準【高】

  • 高い目標に向かってチーム一丸となって挑戦しつつも、失敗や意見の違いを恐れず、お互いに学び合い、成長できる理想の状態。
  • これこそが、真の「心理的安全性が高い」チームです。健全な衝突(コンフリクト)を恐れず、建設的な議論を通じて、より良いアイデアや解決策を生み出します。高いパフォーマンスとイノベーションは、このゾーンから生まれます。

このマトリクスが示す通り、私たちが目指すべきは、単に居心地の良い「快適ゾーン」ではなく、高い基準と心理的安全性が両立する「学習ゾーン」なのです。心理的安全性は、高いパフォーマンスを求めるための「土台」であり、「免罪符」ではないことを、リーダーは強く認識する必要があります。

働く人々
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第2章:心理的安全性がもたらす5つの絶大なメリット

「学習ゾーン」を目指すことで、組織には具体的にどのような恩恵があるのでしょうか。心理的安全性が高いチームが手に入れることのできる、5つの大きなメリットを解説します。

メリット1:チームの生産性向上

これはGoogleの調査でも明らかになった、最も直接的なメリットです。心理的安全性が高いチームでは、メンバー間の情報共有が活発になります。

  • 「このやり方、もっと効率的にできる方法があるんじゃないか?」
  • 「今、〇〇のタスクで少し詰まっています。誰か助けてもらえませんか?」

このような発言が気軽に行われるため、問題が大きくなる前に解決策が見つかり、業務プロセスが常に改善されていきます。無駄な忖度や情報隠しによる手戻りがなくなり、チーム全体としてのアウトプットの質と量が向上します。

メリット2:イノベーションの創出

イノベーションの種は、多くの場合、常識を疑うような「素朴な疑問」や、一見すると突拍子もない「斬新なアイデア」から生まれます。

心理的安全性が低い組織では、「そんなことできるわけない」「馬鹿なことを言うな」と一蹴されることを恐れ、誰もが口をつぐんでしまいます。結果、既存のやり方を踏襲するばかりで、新しい価値は生まれません。

一方、心理的安全性が高いチームでは、「それ、面白いね!」「もう少し具体的に聞かせて?」と、どんな意見もまずは歓迎されます。多様なアイデアがぶつかり合い、磨かれていく中で、これまでにない画期的な製品やサービスが生まれる可能性が飛躍的に高まるのです。

メリット3:従業員エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントとは、「仕事に対するポジティブで充実した心理状態」であり、組織への貢献意欲を指します。

自分の意見が尊重され、ありのままの自分でいられる職場では、メンバーは「自分はこのチームの一員として認められている」「自分の仕事には価値がある」と感じることができます。これが、Googleの5つの因子のうち「仕事の意味」や「仕事のインパクト」にも繋がります。

エンゲージメントが高い従業員は、自律的に行動し、より高い成果を目指して主体的に仕事に取り組みます。

メリット4:離職率の低下と人材定着

多くの人が職場を去る理由の上位には、常に「人間関係」の問題が挙げられます。特に、優秀で意欲の高い人材ほど、自分の意見が言えず、挑戦もできないような抑圧的な環境に見切りをつけるのは早いでしょう。

心理的安全性の高い職場は、働きがいがあり、成長を実感できる環境です。メンバーは組織への帰属意識を高め、長く働き続けたいと考えるようになります。採用コストの削減はもちろん、経験や知識が組織に蓄積されていくという大きなメリットにも繋がります。

メリット5:迅速な問題発見とコンプライアンス強化

心理的安全性の欠如は、時に企業存続を揺るがすような重大なリスクを引き起こします。製品の欠陥、顧客からのクレーム、不正行為の兆候… これらの「不都合な真実」は、報告すれば自分が非難されるかもしれないという恐怖から、現場で握りつぶされてしまうことが少なくありません。

心理的安全性が確保されていれば、メンバーは問題を隠すことなく、正直に報告することができます。これにより、組織は問題を早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。結果として、コンプライアンスが強化され、大きな経営リスクを未然に防ぐことができるのです。

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第3章:心理的安全性が低い職場の末路【デメリット・リスク】

メリットの裏返しとして、心理的安全性が低い職場がどのような悲惨な状況に陥るのかを具体的に見ていきましょう。これは、あなたの組織が今すぐ対策を打たなければならない理由を浮き彫りにします。

デメリット1:「サイレントな退職」が蔓延する

最近注目されている「Quiet Quitting(サイレントな退職/静かな退職)」という言葉をご存知でしょうか。これは、実際に退職はしないものの、契約上最低限の仕事しかせず、それ以上の貢献意欲を失ってしまった状態を指します。

心理的安全性が低い職場では、従業員は「言っても無駄」「頑張っても評価されない」と学習し、徐々に情熱を失っていきます。彼らはただ出社し、指示されたことだけをこなし、定時になれば帰るだけ。組織は、活気のない「指示待ち人間」で溢れかえってしまいます。

デメリット2:不正やミスの隠蔽が常態化する

「失敗は許されない」という文化は、必ずミスの隠蔽を生みます。小さなミスが報告されずに放置され、やがて取り返しのつかない大問題に発展するケースは後を絶ちません。

これは、製品の品質問題や情報漏洩、顧客とのトラブルだけでなく、ハラスメントや不正会計といったコンプライアンス違反にも直結します。リーダーが問題を知った時には、すでに手遅れになっている可能性が高いのです。

デメリット3:メンタルヘルスの悪化と休職者の増加

常に他人の顔色を伺い、自分の意見を押し殺し、ミスを恐れて緊張し続ける… そんな環境で働き続ければ、心身が疲弊していくのは当然です。

心理的安全性の低い職場は、うつ病や適応障害といったメンタルヘルス不調の温床となります。休職者が増えれば、残されたメンバーの負担はさらに増大し、負のスパイラルに陥ってしまいます。これは、個人の不幸であると同時に、組織にとっても大きな損失です。

デメリット4:優秀な人材から真っ先に去っていく

皮肉なことに、心理的安全性が低い組織から最初に見切りをつけて去っていくのは、多くの場合、最も優秀で問題意識の高い人材です。

彼らは、現状を改善しようと声を上げ、挑戦しようとします。しかし、その行動が受け入れられず、叩かれたり無視されたりする経験を繰り返すうちに、「この組織に未来はない」と判断し、自分を正当に評価してくれる新しい環境を求めて去っていきます。結果として、組織には変化を嫌うイエスマンばかりが残り、競争力はますます低下していくのです。

疲れている人

第4章:【超実践編】明日からできる!心理的安全性を高める7つの方法

では、どうすれば心理的安全性の高い「学習ゾーン」をチームに作り出すことができるのでしょうか。ここからは、特にリーダーや管理職が明日からすぐに実践できる、具体的で効果的な7つのアクションプランを紹介します。

方法1:リーダー自らが「弱さ」を見せる(自己開示)

心理的安全性を高める上で、最もパワフルで即効性のある方法がこれです。完璧で何でも知っている「強いリーダー」を演じるのをやめ、リーダー自らが率先して自分の弱さや間違い、無知をさらけ出すのです。

【具体的な行動例】

  • 間違いを認める: 「ごめん、さっきの私の指示は間違っていた。Aさんの言う通りに進めよう」
  • 知らないことを認める: 「その技術については詳しくないんだ。〇〇さん、教えてもらえるかな?」
  • 弱みを打ち明ける: 「実は人前で話すのがすごく苦手で、今も緊張しているんだ」
  • 助けを求める: 「この案件、一人では厳しい。みんなの力を貸してほしい」

リーダーが「完璧ではない自分」を見せることで、メンバーは「この人の前では、自分も完璧でなくても大丈夫なんだ」「失敗しても、正直に言えば許されるんだ」と感じることができます。リーダーの脆弱性(Vulnerability)の開示が、チーム全体の安心感の扉を開く鍵となるのです。

方法2:メンバーの発言を「傾聴」し「承認」する

メンバーが勇気を出して何かを発言したとき、リーダーの反応がその後のチームの文化を決定づけると言っても過言ではありません。重要なのは、「傾聴」と「承認」の姿勢です。

【具体的な行動例】

  • 話を遮らず最後まで聞く: 相手が話し終わるまで、自分の意見を挟まずに集中して耳を傾ける。
  • 非言語的なサインで聞いている姿勢を示す: 相槌を打つ、頷く、相手の目を見る、メモを取る。
  • 発言内容を要約して確認する: 「つまり、〇〇という点が問題だと考えている、という理解で合っていますか?」
  • 発言そのものを承認・感謝する:
    • (NG例) 「でも、それは現実的じゃないよ」「なぜもっと早く言わなかったんだ」
    • (OK例) 「なるほど、そういう視点があったか。教えてくれてありがとう」「貴重な意見をありがとう。とても参考になるよ」

たとえその意見に最終的に同意できなかったとしても、まずは「発言してくれたこと自体」をポジティブに受け止めることが重要です。批判や反論は、まず相手の意見をしっかりと受け止めた後に行うべきです。

方法3:「無知の知」を表明し、質問を歓迎する文化を作る

「こんなこと聞いたら馬鹿だと思われるかも…」という恐怖は、心理的安全性を阻害する最大の敵の一つです。リーダーは、「知らないことは恥ではない。むしろ、知らないままにすることが問題だ」というメッセージを、言動で示し続ける必要があります。

【具体的な行動例】

  • 会議で意図的に「素朴な質問」をする: 「すみません、初歩的なことかもしれないけど、そもそもこのプロジェクトの目的って何でしたっけ?」
  • 質問が出たときに、大げさなくらい歓迎する: 「良い質問ですね!」「みんなが疑問に思っていたことを代弁してくれてありがとう!」
  • 「質問タイム」を設けるのではなく、いつでも質問できる雰囲気を作る: 「何か疑問があったら、いつでも話の途中でも止めてくださいね」

リーダーが率先して「賢い人」ではなく「学ぶ人」としての姿勢を見せることで、チーム全体に質問しやすい空気が醸成されていきます。

方法4. 失敗を「学習の機会」として捉え、非難しない

高い目標に挑戦すれば、失敗はつきものです。その失敗をどう扱うかが、チームの未来を分けます。心理的安全性の高いチームでは、失敗は「非難の対象」ではなく、「貴重な学習データ」として扱われます。

【具体的な行動例】

  • 失敗を報告したメンバーをまず称賛する: 「大変だっただろうに、正直に報告してくれてありがとう。この経験はチームの財産になるよ」
  • 犯人探しをやめる: 「誰がやったんだ!」ではなく、「なぜこの問題が起きたんだろう?どうすれば再発を防げるだろう?」という原因究明と未来志向の問いかけをする。
  • 挑戦したこと自体を評価する: 結果が成功か失敗かだけでなく、その挑戦から何が学べたか、次は何を試すかを議論する。
  • 「ナイス・トライ!」を合言葉にする。

もちろん、怠慢や不注意による同じミスの繰り返しは許容すべきではありません。しかし、前向きな挑戦の結果としての失敗を罰することは、チームから挑戦の炎を消し去る最悪の行為だと心得ましょう。

方法5. 建設的な意見対立(コンフリクト)を促す

心理的安全性は「仲良しクラブ」ではない、と繰り返し述べてきました。むしろ、健全な意見の対立(タスク・コンフリクト)を奨励することが、より良い意思決定とイノベーションに繋がります。

【具体的な行動例】

  • 「人格への攻撃」と「意見への反論」は全く別物であることをチームのルールにする。
  • 議論が白熱してきたら、ファシリテーターとして介入する: 「Aさんの意見は〇〇、Bさんの意見は××ですね。どちらの意見にも良い点があると思いますが、この二つを両立させるような第3の案は考えられませんか?」
  • あえて反対意見を求める: 「この案について、あえて批判的な視点から意見をくれる人はいますか?」「この計画のリスクは何だと思いますか?」

リーダーは、意見が対立した際にそれを個人の対立と捉えず、チームの課題を多角的に検討する絶好の機会と捉える姿勢が求められます。

方法6. 1on1ミーティングを効果的に活用する

定期的な1on1ミーティングは、メンバー一人ひとりの心理的安全性を高めるための非常に有効なツールです。ただし、単なる業務進捗の確認会議にしないことが重要です。

【1on1の目的】

  • 信頼関係の構築: 雑談なども交え、人としてお互いを理解する。
  • キャリアや成長の支援: 本人のやりたいこと、悩んでいることを聞き、サポートする。
  • コンディションの把握: 心身の健康状態や、チーム内で困っていることがないかを確認する。

【効果的な質問例】

  • 「最近、仕事でやりがいを感じたのはどんな時?」
  • 「逆に、ちょっとモチベーションが下がってしまったことはあった?」
  • 「チームの働き方について、もっとこうだったら良いのに、と思うことはある?」
  • 「何か新しいアイデアを提案することに、ためらいを感じることはある?」

1on1は、部下を管理・評価する場ではなく、部下の成功を支援するための時間である、というスタンスで臨むことが成功の鍵です。

方法7. チームの共通目標と役割を明確にする

これはGoogleの5つの因子のうち「構造と明確さ」にも直接関わる要素です。チームがどこに向かっているのか、その中で自分は何を期待されているのかが分からなければ、メンバーは安心して自分の力を発揮することができません。

【具体的な行動例】

  • チームのビジョンや目標を、繰り返し言葉にして伝える。
  • 各メンバーの役割と責任範囲を明確にする。「誰がボールを持っているのか」が曖昧な状態をなくす。
  • 意思決定のプロセスを透明化する。「なぜこの決定が下されたのか」の背景を丁寧に説明する。

向かうべきゴールと自分の立ち位置が明確になることで、メンバーは初めて安心してアクセルを踏み込むことができるのです。

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第5章:チームの心理的安全性を測る方法【質問リスト付き】

心理的安全性を高める取り組みを始める前に、まずは「現状把握」が不可欠です。自分たちのチームが今、どのレベルにあるのかを可視化することで、課題が明確になり、打ち手も考えやすくなります。

エイミー・エドモンドソン教授の「7つの質問」

心理的安全性を測定する上で、最もスタンダードで信頼性が高いのが、提唱者であるエドモンドソン教授自身が開発した以下の7つの質問項目です。

チームメンバーに、各項目について「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの段階(例:5段階評価)で、匿名で回答してもらいましょう。

【心理的安全性を測る7つの質問】

  1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される。(逆質問)
  2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  3. チームのメンバーは、自分と違うということを理由に他者を拒絶することがある。(逆質問)
  4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。(逆質問)
  6. チームのメンバーは誰も、私の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  7. チームメンバーと仕事をする上で、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

※(逆質問)の項目は、スコアが低いほど心理的安全性が高いことを示します。集計の際は点数を反転させて計算してください。

このアンケートを定期的に(例:四半期に一度)実施し、スコアの推移を追うことで、チームビルディングの取り組みの効果を測定することができます。結果は必ずチーム全体に共有し、どこに課題があるのか、どうすれば改善できるのかを話し合う機会を設けましょう。

その他の測定方法

  • パルスサーベイの活用: 毎週、あるいは隔週で「今週、職場で自分の意見を安心して言えましたか?」といった1〜3問程度の簡単な質問に答えてもらう方法。リアルタイムでチームのコンディションの変化を捉えることができます。
  • 1on1での定性的なヒアリング: 上記のアンケートと併せて、1on1の場で「最近、チームで発言しにくいと感じた瞬間はあった?」など、より踏み込んだ質問をすることで、数値だけでは見えない背景や個別の事情を把握することができます。
ノートとペン

第6章:リーダー・管理職が陥りがちな心理的安全性の「勘違い」

取り組みを進める上で、良かれと思ってやったことが逆効果になることもあります。ここでは、リーダーが特に注意すべき、よくある「勘違い」を3つ紹介します。

勘違い1:「仲が良い」=「心理的安全性が高い」

これは第1章でも触れましたが、最も多い勘違いです。ランチに一緒に行き、プライベートな話もする。一見、関係性は良好に見えます。しかし、仕事の話になった途端、お互いに気を遣って当たり障りのないことしか言えず、本質的な議論ができないのであれば、それは「ぬるま湯(快適ゾーン)」であり、心理的安全性が高いとは言えません。「本音でぶつかり合えるか」が重要な指標です。

勘違い2:「部下の意見を何でも聞く」のが良いリーダーだ

メンバーの意見を尊重するのは重要ですが、全ての意見を鵜呑みにし、全ての要求を受け入れるのが心理的安全性ではありません。リーダーには、チームの目標達成に対する最終的な責任があります。様々な意見に耳を傾け、感謝を示した上で、なぜその意思決定をするのかを論理的に説明し、決断するのがリーダーの役割です。無責任な迎合は、かえってチームを混乱させます。

勘違い3:「一度高めれば、ずっと維持できる」

心理的安全性は、一度作ったら完成する建造物ではありません。それは、日々手入れが必要な「庭」のようなものです。新しいメンバーの加入、プロジェクトの変更、外部環境の変化など、些細なきっかけで簡単に損なわれてしまいます。リーダーは、常にチームの状態に気を配り、継続的に心理的安全性を育むための働きかけを続ける必要があります。

第7章:心理的安全性を学ぶためのおすすめリソース

この記事で心理的安全性に興味を持った方が、さらに学びを深めるための鉄板リソースを3つご紹介します。

1. 【原典】『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』

  • 著者: エイミー・C・エドモンドソン
  • 内容: 提唱者本人による、心理的安全性の全てが詰まったバイブル。豊富な研究データと事例に基づき、その重要性と実践方法が体系的に解説されています。少し学術的ですが、本質を理解したいなら必読の一冊です。

2. 【実践的】『心理的安全性のつくりかた』

  • 著者: 石井 遼介
  • 内容: 日本の組織文化に合わせて、心理的安全性の作り方を非常に分かりやすく、実践的に解説した名著。「心理的柔軟性」「共通の関心事」「構造化」といった具体的なアプローチが満載で、本書のワークをチームで実践するだけでも大きな効果が期待できます。

3. 【動画】エイミー・エドモンドソン TED Talk「素晴らしいチームの作り方」

  • 内容: 約12分の短い動画で、エドモンドソン教授自身が心理的安全性のエッセンスを語っています。看護師チームの研究事例などを通して、その重要性が直感的に理解できます。日本語字幕もありますので、まずはここから入るのもおすすめです。
夜明けの空

まとめ:心理的安全性は、未来を創る組織の「OS」である

この記事では、「心理的安全性」という、現代の組織運営において最も重要なコンセプトの一つを、多角的に掘り下げてきました。

VUCAと呼ばれる、不確実で変化の激しい時代において、過去の成功体験やトップダウンの指示だけでは、もはや組織は生き残れません。現場のメンバー一人ひとりが持つ知識、経験、アイデアを最大限に引き出し、集合知として結集させていくことが不可欠です。

そのために必要な土台、いわば組織の能力を最大化するための「OS(オペレーティングシステム)」こそが、心理的安全性なのです。

この記事で紹介した7つの方法を、明日から一つでも構いません。まずは、リーダーであるあなた自身が、小さな一歩を踏み出してみてください。あなたのその小さな勇気が、チームの空気を変え、メンバーの心を動かし、やがては組織全体の文化を変革する、大きな波の第一歩となるはずです。

活気と挑戦に満ちた、成果を出すチーム作りを、心から応援しています。

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