
「どうして自分は、いつも同じようなタイプの人を好きになってしまうのだろう」 「あの人は、どんな異性に惹かれるのだろう」 「“好きなタイプ”を聞いたのに、実際の恋人はまったく違う人だった」
恋愛について考えたことがある人なら、一度はこんな疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
結論から言うと、人がどんなタイプの異性を好きになるのかは、「生まれ持った傾向」「育ってきた環境と経験」「出会った場面や状況」という3つの要素が重なり合って決まると、心理学では考えられています。「顔が好み」「性格が合う」といった単純な理由だけでは説明できない、意外なメカニズムが数多く報告されているのです。
この記事では、社会心理学・進化心理学・発達心理学(愛着理論)の研究成果と、国立社会保障・人口問題研究所の全国調査をもとに、次のような内容をわかりやすく解説します。
- 人が異性に惹かれる8つの心理的要因(近接性・単純接触効果・類似性など)
- 進化心理学が示す「異性の好み」と、その限界
- 愛着スタイル別に見る「好きになりやすい異性のタイプ」
- 男性・女性それぞれの傾向(日本の調査データを含む)
- 「好きなタイプ」と「実際に好きになる人」がズレる理由
- 心理学を恋愛に活かす具体的な方法と、注意したい落とし穴
なお、本記事は恋愛心理に関する研究を紹介するものであり、特定の人を思い通りに動かすための操作術ではありません。「自分を知る」「相手を理解する」ための材料として活用してください。
おすすめ- 1. 結論:好きになるタイプは「素質×経験×状況」で決まる
- 2. 心理学が明らかにした、異性に惹かれる8つの要因
- 3. 進化心理学から見た「異性の好み」とその限界
- 4. 愛着スタイル別:好きになりやすい異性のタイプ
- 5. 子ども時代や親子関係は「好み」に影響するのか
- 6. 男性が好きになりやすい女性の傾向
- 7. 女性が好きになりやすい男性の傾向
- 8. 性格特性から見る「長続きしやすい相手」
- 9. なぜ「好きなタイプ」と「実際に好きになる人」はズレるのか
- 10. 好きになる心理を恋愛に活かす7つの方法
- 11. 要注意:惹かれやすいが苦しくなりやすい3つのパターン
- 12. 自分の「好きになるタイプ」を知るセルフチェック
- 13. よくある質問(FAQ)
- 14. まとめ
- 📚 参考文献・出典
1. 結論:好きになるタイプは「素質×経験×状況」で決まる

まず、この記事全体の見取り図を示します。
人が異性(あるいは恋愛対象となる相手)を好きになるプロセスには、大きく分けて3つの層があります。
| 層 | 主な内容 | 代表的な理論・研究 |
|---|---|---|
| ① 素質・生物学的傾向 | 外見の好み、健康や若さへの反応、においの好みなど | 進化心理学、ハロー効果 |
| ② 経験・発達の影響 | 親との関係、これまでの恋愛経験、愛着スタイル | 愛着理論、性的刷り込みの研究 |
| ③ 状況・環境要因 | 物理的な距離、会う頻度、その場の感情状態、タイミング | 近接性、単純接触効果、吊り橋効果 |
多くの人は「好きなタイプ=自分の内側にある固定された好み」だと考えがちです。しかし、心理学の研究は、好意は「相手の属性」だけでなく、「二人の関係の中で生まれるもの」でもあることを繰り返し示してきました。
たとえば、後ほど詳しく紹介するスピードデート(短時間の面談を繰り返す出会いのイベント)を用いた研究では、事前に語られていた「理想のタイプ」と、実際に会って惹かれた相手の特徴には、思ったほど強い対応関係が見られませんでした。つまり、「好きなタイプ」は自己申告できるほど固定的なものではないのです。
この視点に立つと、恋愛の悩みは次のように整理できます。
- 「なぜこのタイプに惹かれるのか」→ ①②の層(素質と経験)を振り返る
- 「なぜあの人に惹かれたのか」→ ③の層(状況)と、二人の間のやりとりを振り返る
- 「どうすれば好かれるのか」→ 相手の好みを当てにいくより、③の層(接触・共通点・安心感)を整える
以降の章で、それぞれの層を具体的な研究とともに見ていきましょう。
おすすめ2. 心理学が明らかにした、異性に惹かれる8つの要因

ここでは、社会心理学の研究で「好意(対人魅力)」を高めることが確かめられてきた8つの要因を紹介します。実は、このうちの多くは「相手の中身」ではなく、接し方や状況に関するものです。
2-1. 近接性:物理的に近い人ほど好きになりやすい
最初に押さえたいのが「近接性」です。物理的な距離が近い人ほど、親しくなりやすく、好意を持ちやすいという傾向を指します。
古典的な研究として、心理学者フェスティンガーらが1950年に発表した、大学の学生寮(ウェストゲート住宅)での調査があります。この調査では、同じ棟の隣室や階段・郵便受けの近くに住む人ほど友人関係が形成されやすいことが示されました。関係の中身よりも、「顔を合わせる機会が物理的に多いかどうか」が、親しさを左右していたのです。
この研究は主に友人関係を扱ったものですが、恋愛においても同じ原理が働くと考えられています。職場、学校、サークル、習い事、行きつけの店など、日常的に顔を合わせる場所で恋が始まりやすいのは、この近接性で説明できます。
近年ではSNSやマッチングアプリの普及により、「物理的な距離」は以前ほど絶対的な条件ではなくなりました。ただし、オンラインでも「頻繁にやりとりする相手」「同じコミュニティにいる相手」ほど親しくなりやすいという点では、原理は共通しています。
2-2. 単純接触効果:会うほど好意が高まる
近接性と密接に関わるのが「単純接触効果(ザイアンス効果)」です。心理学者ザイアンスが1968年の論文で報告したもので、特に意識しなくても、繰り返し接触した対象に対して好意が高まるという現象です。
その後の研究でも、この効果は人物にも当てはまることが示されています。たとえば、モアランドとビーチ(1992年)が行った大学での実験では、女性の実験協力者が授業に出席する回数が多いほど、同じ教室の学生から「好ましい」「また会いたい」と評価されやすいという結果が得られました。
ただし、単純接触効果には重要な条件があります。
- 最初の印象が悪い場合は、接触が増えるほど嫌悪が強まることがある
- 接触の「質」が悪い(不快なやりとりが多い)と効果が出ない
- 過度な接触は逆にマイナスになる(しつこさ・圧迫感につながる)
「とにかく会えば好かれる」わけではなく、あくまで中立〜好印象のスタートラインに立っている場合に、自然な頻度の接触が好意を育てると理解しておきましょう。
2-3. 類似性:似た者同士は惹かれ合う
「正反対の人に惹かれる」「磁石のように反対同士が引き合う」という言い方を聞いたことがあるかもしれません。しかし、実証研究の多くは逆の結果を示しています。価値観・態度・興味・生活習慣などが似ている人ほど、好意を持たれやすいのです。
社会心理学者バーンは、1960〜70年代の一連の研究で「態度の類似性が高いほど、その相手への好意が高まる」ことを繰り返し確認し、これを「類似性-魅力パラダイム」として体系化しました。
さらに、モントーヤらによる2008年のメタ分析(複数の研究結果を統合した分析)は興味深い点を指摘しています。それは、好意に強く影響するのは「実際の類似度」よりも「似ていると感じているかどうか(知覚された類似性)」だという点です。
なぜ類似性は好意につながるのでしょうか。主な理由は次の3つです。
- 自分の考えが肯定される:似た価値観の人は、自分の考えや選択を認めてくれる存在に感じられる
- 予測しやすく安心できる:行動パターンが読みやすく、衝突が少ないと期待できる
- 共有体験が増える:同じ趣味・関心を通じて、一緒に過ごす楽しさが生まれる
一方で「相補性(自分にない部分を持つ人に惹かれる)」という考え方もあります。しかし、後述するクロネンとルオ(2003年)の研究などでは、パーソナリティの相補性が魅力を予測するという証拠はあまり得られていません。「違う部分が魅力的に映る」場面はあっても、土台となる価値観は似ている相手を選ぶ傾向が強いと考えたほうがよさそうです。
2-4. 外見の魅力とハロー効果:見た目は「入り口」として強い
外見が恋愛の入り口で大きな影響力を持つことは、多くの研究が一致して示しています。
1966年にウォルスターらが行った有名な実験(コンピュータ・ダンス実験)では、大学の新入生歓迎ダンスパーティーで参加者をランダムにペアにし、後日その相手への好意を尋ねました。その結果、性格や知性などの要素より、相手の外見的魅力がもっとも強く「また会いたい」という意欲を予測したのです。
また、ディオンらが1972年に発表した研究は、「魅力的な人は、性格も良い・能力も高い・幸せになりやすいと見なされやすい」ことを示し、「美しい人は良い人(What is beautiful is good)」というステレオタイプの存在を明らかにしました。これがいわゆるハロー効果(後光効果)です。ひとつの目立つ特徴(この場合は外見)が、他の評価にまで影響してしまう現象です。
ただし、ここで注意したい点があります。
- 外見の好みには個人差があり、文化や時代の影響も受ける
- 初対面での印象には強く働くが、交際が続く中で外見の重要度は相対的に下がる傾向がある
- 実際のカップルを分析した研究(フェインゴールド、1988年のメタ分析)では、外見の魅力度が近い者同士がカップルになりやすいことが示されている
「誰もが最も魅力的な相手を選ぶ」のではなく、拒絶されるリスクや現実的な釣り合いも考慮しながら、私たちは相手を選んでいるようです。
なお、外見的な魅力には顔立ちだけでなく、清潔感、表情、姿勢、声のトーン、身だしなみなども含まれます。これらは努力で変えられる部分が多く、「生まれつきの顔」だけが全てではありません。

2-5. 好意の返報性:「好かれている」と感じると好きになる
「自分に好意を持ってくれている人を好きになる」——これは、心理学で好意の返報性と呼ばれる、とても強力な原理です。
カーティスとミラー(1986年)の実験では、参加者に「相手があなたを好意的に見ている」と(実際とは無関係に)伝えたところ、その参加者は相手に対してより温かく、打ち解けた態度で接するようになりました。そして、その結果として実際に相手からも好意を持たれたのです。「好かれている」という思い込みが、自分の行動を変え、本当に好かれる結果を生む——いわば“自己成就予言”のような現象です。
好意の返報性が働きやすいのは、次のような場面です。
- 笑顔や相づち、興味を持った質問など、好意が伝わるサインを受け取ったとき
- 特に自分の悪いところや弱いところを知ったうえで、受け入れてくれたとき
- 自分だけに向けられた特別な関心を感じたとき
恋愛の初期段階で、「あの人は自分に好意があるのかもしれない」と気づいた途端に、その人が気になり始めた——という経験がある人も多いでしょう。これが返報性の典型例です。
2-6. ギャップ(ゲイン・ロス効果):印象の“変化幅”が好意を左右する
ギャップに惹かれる、という感覚は多くの人が共感できるものです。心理学では、これを説明する概念としてゲイン・ロス効果があります。
アロンソンとリンダー(1965年)の実験では、相手から受ける評価が「最初は低かったが、後に高くなった」場合のほうが、「最初からずっと高かった」場合よりも、その相手への好意が強くなる傾向が示されました。逆に「最初は高評価だったのに、後に下がった」場合は、最初から低評価だった場合以上に好意が下がりやすくなります。
日常の恋愛でいえば、次のようなギャップが該当します。
- 普段はクールなのに、ふとした瞬間に優しさを見せる(ゲイン)
- 最初は苦手だと思っていた人が、実は面倒見の良い人だった(ゲイン)
- 最初は優しかったのに、付き合い始めてから態度が変わった(ロス)
なお、日本語の「ギャップ萌え」という言葉は学術用語ではありませんが、ゲイン・ロス効果は、その心理的な背景の一つを説明してくれます。ただし、意図的にギャップを演出しようとすると不自然さが出て、逆効果になることもあるため、演技よりも「自然な多面性」を見せる意識が大切です。
2-7. 吊り橋効果:ドキドキが恋愛感情と混同される
「吊り橋の上で出会った相手に恋をしやすい」という話は、恋愛心理の中でも特に有名です。
この元となっているのは、ダットンとアロン(1974年)の実験です。カナダの高くて揺れる吊り橋(キャピラノ橋)と、揺れない低い橋の上で、女性の調査員が男性の通行人にアンケートを頼み、後日の連絡先を渡しました。その結果、揺れる吊り橋の上で調査を受けた男性のほうが、後日調査員に連絡してくる割合が高かったと報告されています。
この現象は「情動の誤帰属」と呼ばれます。恐怖や緊張による心拍数の上昇を、「目の前の相手にドキドキしている」と誤って解釈してしまう、という説明です。
ただし、この効果を過信するのは禁物です。
- 元々、相手に対して好印象を持っている場合に効果が出やすく、印象が悪い相手には逆効果になりうる(ホワイトら、1981年の追試)
- 研究の規模が小さく、結果の解釈にも議論がある
- 恐怖体験を無理に作ることは、相手にとって不快で危険な場合がある
活かすなら、「一緒にジェットコースターに乗る」「スポーツやアクティビティを楽しむ」など、安全で、お互いに楽しめる高揚感のある体験を共有する程度が現実的でしょう。

2-8. 自己開示と自己拡張:内面を語り合うほど、関係は深まる
最後の要因は、二人の間でどれだけ「内面」を共有したかです。
コリンズとミラーによる1994年のメタ分析では、自己開示(自分の考え・感情・経験を相手に伝えること)が多い相手に好意を抱きやすく、また自己開示した相手のことも好きになりやすいことが確認されています。ポイントは、一方通行ではなく「お互いに」段階的に打ち明け合うことです。
さらに、アロンらが1997年に発表した研究では、初対面の二人が45分間、徐々に深い内容になる36個の質問に交互に答えていくだけで、通常の雑談を行った場合よりも高い親密さが生まれたと報告されています。
また、アロン夫妻が提唱した「自己拡張モデル」では、人は恋愛関係を通じて「新しい視点、経験、能力」を取り込み、自分自身が広がっていくと感じるとき、その相手に強く惹かれると説明されています。「この人といると、新しい自分になれる」と感じる相手に惹かれやすいのは、こうした理由からです。
おすすめ3. 進化心理学から見た「異性の好み」とその限界

ここまでは、主に「関係が始まる状況」に注目してきました。次に、「どんな特徴を持つ人が好まれやすいのか」という点について、進化心理学の視点から見てみましょう。
3-1. 進化心理学の基本的な考え方
進化心理学では、人間の心は、祖先が直面した生存・繁殖上の課題に適応する形で進化してきたと考えます。この立場からは、「健康」「繁殖能力」「子育てへの投資」に関わる特徴が、異性の魅力として感じられやすいと予測されます。
代表的な研究が、心理学者バスが1989年に発表した、世界37の文化圏(約1万人)を対象とした大規模調査です。この調査から、次のような傾向が報告されました。
- 男女ともに「相互の愛情(お互いに惹かれ合うこと)」と「信頼できる性格」「思いやり・理解」を非常に重視していた
- 女性のほうが、相手の経済的な見通しや向上心・勤勉さを重視する傾向が強かった
- 男性のほうが、相手の若さや外見的魅力を重視する傾向が強かった
この結果は「男性は外見、女性は経済力」という単純な図式として、しばしば引用されます。しかし、ここで見落とされがちなのは、男女とも最上位に来ていたのは“性格や愛情”だったという点です。
3-2. 進化心理学の説明に対する批判と最新の見解
一方で、この見方にはさまざまな批判や再検討も加えられています。
(1)社会的役割の影響 イーグリーとウッド(1999年)は、性差は進化的な傾向だけでなく、「男女が社会で担ってきた役割」の違いから生まれるという説明を提示しました。実際に、男女の経済的な平等度が高い国ほど、配偶者選好の性差が小さくなる傾向が報告されています。つまり、「女性は経済力を求める」という傾向は、女性が経済的に自立しにくい社会だったことの反映でもある、という見方です。
(2)「言葉で答える好み」と「実際の行動」のズレ イーストウィックとフィンケル(2008年)は、スピードデートの場を使った実験で、事前アンケートでは典型的な性差(男性は外見重視、女性は収入重視)が見られたものの、実際に会って好意を感じた相手を予測するうえでは、そうした性差はほとんど見られなかったことを報告しました。
(3)においによる相性説の再検討 1995年にヴェーデキントらが報告した、「免疫に関わる遺伝子(MHC)が自分と異なる人のにおいを好む」という研究は、大きな話題となりました。しかし、その後の追試やメタ分析(ウィンターニッツら、2017年)では、人間においては一貫した結果が得られておらず、確定的とは言えないとされています。「においの相性」という表現は魅力的ですが、科学的には「まだ結論が出ていない領域」です。
進化心理学の知見は、人類全体の平均的な傾向を理解するうえでは役立ちます。ただし、それを目の前の一人ひとりに当てはめて「この人はこういうタイプが好きなはず」と決めつけることはできません。
4. 愛着スタイル別:好きになりやすい異性のタイプ

ここからは、恋愛心理の中でも「自分自身の傾向」を知るうえで非常に役立つ、愛着(アタッチメント)理論を取り上げます。
4-1. 愛着スタイルとは
愛着理論は、精神科医ボウルビィが提唱し、心理学者エインズワースが実証的に発展させた理論です。乳幼児期の養育者との関係を通じて形成された「人との関わり方の基本パターン(内的作業モデル)」が、成人後の親密な関係にも影響を及ぼすと考えます。
ヘイザンとシェイバーが1987年に、この理論を成人の恋愛に応用して以降、多くの研究が積み重ねられてきました。現在の研究では、愛着スタイルを次の2つの次元で捉えることが一般的です。
- 愛着不安:「見捨てられるのではないか」「愛されていないのではないか」と不安になりやすい度合い
- 愛着回避:親密になりすぎることを避け、距離を取ろうとする度合い
この2つの組み合わせから、バーソロミューとホロウィッツ(1991年)の4分類が広く使われています。
| タイプ | 愛着不安 | 愛着回避 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 安定型 | 低い | 低い | 親密さも自立も心地よく感じられる |
| 不安型(とらわれ型) | 高い | 低い | 相手の反応に敏感で、確認や安心を強く求める |
| 回避型(拒絶型) | 低い | 高い | 距離を保ち、自立を重視。感情表現が控えめ |
| 恐れ・回避型 | 高い | 高い | 親密さを求めつつ、傷つくことを恐れて近づけない |
4-2. 愛着スタイル別の「惹かれやすいタイプ」
安定型の人の場合 安定型の人は、比較的、誠実で一貫した態度の相手に惹かれやすい傾向があります。「ドキドキ」よりも「安心」や「話しやすさ」を魅力として感じやすく、恋愛が穏やかに進みやすいのが特徴です。一方で、駆け引きの多い相手には「面倒だな」と感じて、早い段階で距離を置くこともあります。
不安型の人の場合 不安型の人は、優しく寄り添ってくれる相手に惹かれる一方で、「掴みどころのない相手」「気持ちが読めない相手」に強く惹きつけられやすいことが指摘されています。相手の反応が不確定であるほど、「もっと確かめたい」「気持ちを得たい」という感覚が刺激されるためです。この強い感情の高まりを「運命的な恋」と感じやすい点には、注意が必要です。
回避型の人の場合 回避型の人は、束縛が少なく、自分のペースを尊重してくれる相手に居心地の良さを感じやすい傾向があります。一方で、相手が距離を詰めてくると息苦しさを覚えて引いてしまうことも。「追われると逃げたくなる」「離れると気になる」という揺れ動きが見られることがあります。
恐れ・回避型の人の場合 恐れ・回避型の人は、親密さを求める気持ちと、傷つくことへの恐れとの間で葛藤しやすいと考えられます。安心できる関係の中で少しずつ信頼を積み重ねていくことが鍵になります。
4-3. 研究が示す「愛着の安定」の魅力
ここで、先ほど少し触れたクロネンとルオ(2003年)の研究を紹介します。この研究は、「自分と似た人」「理想像に近い人」「自分と補い合える人」「愛着が安定している人」のうち、実際に魅力を予測したのはどれかを検証しました。
その結果、もっとも一貫して魅力と結びついていたのは、相手の「愛着の安定性」(温かく、誠実で、感情的に安定している)だったと報告されています。私たちは頭の中で「ドキドキする人」を思い描きがちですが、長期的な関係を考えると、「安心できる人」が実は好まれやすいのです。
4-4. 愛着スタイルは「変えられない運命」ではない
「自分は不安型だから恋愛が苦手だ」と思い込む必要はありません。愛着スタイルは、次のような要因で、成人後も変化しうることが示されています。
- 安定した相手との長期的な関係
- 信頼できる友人や家族との関わり
- 心理療法やカウンセリングを通じた自己理解
- 過去の経験を振り返り、整理すること
幼少期には不安定な愛着を持っていても、成人後の経験を通じて安定型に近づく「獲得安定型(earned security)」という概念も、研究で議論されています。
おすすめ5. 子ども時代や親子関係は「好み」に影響するのか

「異性の好みは、親の影響を受ける」という話は、俗に「ファザコン」「マザコン」といった言葉で語られることがあります。では、研究ではどこまで確かめられているのでしょうか。
5-1. 性的刷り込みに関する研究
動物の世界では、幼少期に接した養育者の特徴が、成体になってからの配偶者選びに影響する「性的刷り込み」が知られています。人間でも、同様の現象を探る研究が行われてきました。
たとえばリトルらの2003年の研究では、パートナーの髪の色や目の色が、異性の親のそれと似ている傾向があることが報告されています。またバーレツケイらの研究(2004年)では、両親との関係が温かかった人ほど、パートナーの外見が親に似る傾向が強かったことも示されています。
ただし、この現象については以下の点に注意が必要です。
- 効果の大きさは限定的で、「必ず親に似た人を選ぶ」わけではない
- 研究によって結果が異なることもあり、まだ議論が続いている
- 外見だけでなく、性格面での類似は、より複雑
5-2. 「親との関係」がもたらす影響は、外見よりも“関わり方”
より確実とされているのは、外見よりも、「親密な関係でどう振る舞うか」というパターンへの影響です。
- 親が安定して応答してくれた → 他者を信頼しやすく、安定した関係を築きやすい
- 親の反応が一貫しなかった → 「相手の気持ちを確認し続けたくなる」パターンが生まれやすい
- 親が感情表現に乏しかった → 「感情を頼るのは危険」と学び、距離を置きやすい
つまり、「親に似た人を好きになる」というより、「慣れ親しんだ関係のパターンを、無意識に再現しやすい」と表現するほうが、現在の理解に近いといえます。子どもの頃に体験した「愛され方」が、大人になってからの「惹かれやすい関係性」に影響しているのです。
なお、精神分析で語られてきたエディプス・コンプレックスや「父親(母親)像の投影」といった説明は、心理学史の上では重要な概念ですが、実証研究で明確に裏付けられているとは言えない点も、あわせて押さえておきましょう。
6. 男性が好きになりやすい女性の傾向

ここからは、男性・女性それぞれの傾向を見ていきます。最初にお断りしておくと、以下はあくまで集団の平均的な傾向であり、個人差のほうがはるかに大きいことを前提にお読みください。
6-1. 日本の調査データが示す「結婚相手に求める条件」
日本の状況を知るうえで、信頼性の高いデータが国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」です。2021年に実施された第16回調査(2022年に結果概要が公表)では、「いずれ結婚するつもり」と答えた18〜34歳の未婚者に、結婚相手を決めるうえで、学歴・職業・経済力・人柄・容姿・共通の趣味・仕事への理解と協力・家事育児の能力や姿勢といった8項目を、どの程度重視するかを尋ねています。
その結果、男女ともに上位3項目は同じで、「人柄」「家事・育児の能力や姿勢」「仕事への理解と協力」の順でした。恋愛や結婚の相手に求める条件として、日本の若い世代は、外見やスペックより先に「人としての信頼性」や「生活を共にするパートナーとしての姿勢」を挙げているのです。
⚠️ この調査は「結婚相手に求める条件」を尋ねたものであり、恋愛初期に“惹かれる”感情そのものを測ったものではありません。この違いは、第9章で詳しく扱います。
6-2. 男性が女性に惹かれやすいポイント
上記の調査で、男性が女性より相対的に重視する傾向があるのは**「容姿」**です。女性のほうが経済力(約9割が重視・考慮)を挙げる割合が高いのに対し、男性で経済力を挙げる割合は約5割にとどまる、という報道もあります(※いずれも同調査の数字を引用した報道による)。
これらを踏まえて、男性が女性に惹かれやすいとされる要素を整理すると、次のようになります。
① 外見的な魅力と清潔感 顔立ちだけではなく、表情の明るさ、髪型や服装の清潔感、姿勢や身のこなしなど、印象全体が影響します。特に第一印象の段階では、視覚情報の影響力が大きいことが多くの研究で示されています。
② 温かさ・思いやりを感じさせる態度 バスの37文化調査でも、男性が女性に求める特性の上位には「親切・理解」が入っています。笑顔で話を聞いてくれる、感謝を言葉にしてくれる、といった日常的な温かさは、男性の好意を引き出しやすいポイントです。
③ 自分を認めてくれる(肯定的なフィードバックをくれる) 好意の返報性でも述べたとおり、人は「自分を好意的に見てくれる人」に惹かれます。相手の良い部分に気づき、それを具体的に言葉にできる人は、好印象を持たれやすいでしょう。
④ 一緒にいて気楽・居心地が良い 類似性や安心感による効果です。共通の話題があること、気を遣いすぎずに話せることは、恋愛が「続く」ための重要な土台になります。
6-3. 男性側が誤解しやすいポイント
男性が女性の言動を解釈する際に、注意しておきたい傾向もあります。ハゼルトンとバス(2000年)の「エラー・マネジメント理論」では、男性は女性の友好的な態度を、実際以上に「性的・恋愛的な好意」と受け取りやすい傾向があると議論されています。
「優しくしてくれた=好意がある」とは限りません。相手の態度が「その人の通常運転」なのか、「自分だけに向けられた特別なもの」なのかを見極めることが、すれ違いや誤解を防ぐことにつながります。
おすすめ7. 女性が好きになりやすい男性の傾向

7-1. 女性が男性に惹かれやすいポイント
前章で見たとおり、日本の調査では、女性のほうが男性に「経済力」を求める割合が高く(重視・考慮するとの回答が約9割)、また、家事・育児への能力や姿勢についても、女性の回答は9割を超える高い水準です。同時に、近年は女性が男性に求める「容姿」の割合も上昇していることが、経年比較から指摘されています(1992年の約68%から、2015年調査では約78%へ)。
これらのデータと心理学研究を組み合わせると、女性が男性に惹かれやすい要素は、次のように整理できます。
① 誠実さ・信頼できる人柄 バスの37文化調査でも、男女共通で上位に来ていたのは「信頼できる性格」でした。約束を守る、言動が一貫している、嘘をつかない、といった特徴は、長期的な関係を考えるほど重要性が増します。
② 生活面での安定感(経済面と精神面の両方) 女性が経済力を重視する背景には、「結婚・出産・育児によって収入が変化しやすい」という現実的な事情があると考えられます。ただし、単純な年収の多さだけでなく、お金の使い方や将来設計に対する考え方が誠実かどうかという点も重視される傾向があります。
③ 感情が安定していて、話を聞いてくれる パーソナリティ研究では、情緒の安定性(神経症傾向の低さ)が、パートナーの満足度と関連することが示されています(詳細は第8章)。感情の起伏が激しい人より、落ち着いて受け止めてくれる人は、安心感を与えます。
④ 家事・育児に対して主体的な姿勢 日本の調査では、男女ともに上位に入る項目です。「やってあげる」という姿勢ではなく、「一緒に担う」という当事者意識を持っているかどうかが、パートナー選びで注目されやすくなっています。
⑤ 清潔感と、自分に合った身だしなみ 前述のとおり、女性が男性の容姿を重視する傾向は高まっています。ここでいう容姿とは、いわゆる「イケメン」であることよりも、清潔感・体型管理・服装のセンスなど、努力で改善できる領域が中心です。
7-2. 女性の好みは「周期で変わる」は本当か
インターネット上では、「女性の好みは月経周期によって変わる(排卵期には“男らしい顔”を好む)」といった話が広まっています。この仮説は、1990年代から2000年代にかけて発表された複数の研究が根拠となってきました。
しかし近年、より大規模なサンプルを用いた追試では、一貫した周期的変化は確認されないことも多く、研究者の間でも慎重な見方が広がっています。少なくとも「周期で好みが劇的に変わる」と断定できる段階ではありません。恋愛の判断材料として過信しないほうが良いでしょう。
8. 性格特性から見る「長続きしやすい相手」

ここまでは、「惹かれやすいタイプ」を中心に見てきました。しかし、「惹かれること」と「一緒にいて幸せなこと」は、必ずしも同じではありません。この章では、長続きしやすい関係に関する研究を紹介します。
8-1. ビッグファイブと恋愛満足度
パーソナリティ研究で広く使われている「ビッグファイブ」は、人の性格を次の5つの特性で捉える枠組みです。
| 特性 | 高い人の特徴 |
|---|---|
| 外向性 | 社交的、活動的、ポジティブな感情を表現しやすい |
| 協調性 | 思いやりがあり、他者と協力的、人を信頼しやすい |
| 誠実性 | 責任感が強く、計画的で、約束や規則を守る |
| 神経症傾向 | 不安・怒り・落ち込みなどのネガティブ感情を感じやすい |
| 開放性 | 好奇心が強く、新しい経験や考え方に前向き |
マルーフらが2010年に発表したメタ分析(複数の研究を統合した分析)では、パートナーの神経症傾向が低く、協調性・誠実性・外向性・開放性が高いほど、関係満足度が高い傾向が確認されています。中でも、神経症傾向(感情の不安定さ)の低さと、協調性の高さが、恋愛の満足に一貫して関連していました。
また、ボトウィンらの1997年の研究では、配偶者に求める特性として、「協調性(思いやり)」「情緒の安定」「知性・開放性」が重視されていること、そして、これらの特性が高い相手を持つ人ほど、結婚生活の満足度が高いことが報告されています。
8-2. 「魅力的」より「一緒にいて安心」が長期的には重要になる
ここで大切なのは、「初対面での魅力」と「長期的な満足」を支える要素は、必ずしも一致しないという点です。
- 初対面:外見、話し方の魅力、自信のある態度
- 長期的:思いやり、誠実さ、感情の安定、対立したときの対応
心理学者ゴットマンは、長期のカップルを観察した研究の中で、関係を悪化させやすい行動として「批判」「軽蔑」「防衛的な態度」「相手を無視する(石壁のような態度)」を挙げています。惹かれる段階では見えにくい「ケンカのときの振る舞い」こそが、関係の長続きを左右するというわけです。
パートナー選びで、次のような点をあらためて観察してみましょう。
- 意見が食い違ったとき、感情的に相手を責めていないか
- 自分の非を認め、謝ることができるか
- 疲れているときやストレスの多いときでも、思いやりを保てるか
- 店員さんや友人など、第三者に対してどんな態度を取っているか
9. なぜ「好きなタイプ」と「実際に好きになる人」はズレるのか

「好きなタイプは優しくて頼りがいのある人だと言っていたのに、実際に好きになったのは正反対の人だった」——こうした話は決して珍しくありません。実は、これは心理学でもよく研究されている現象です。
9-1. 研究が示す「理想のタイプ」の予測力の低さ
イーストウィックらは2014年、「理想のパートナーの条件」が、実際の相手の選択や好意の予測にどれだけ役立つのかを検証した研究を統合(メタ分析)し、次のような結論を報告しました。
- 事前に自己申告した「理想の条件」は、実際に相手と会った際の好意の予測力が限定的だった
- 「理想の条件」が最も当てはまる相手を、実際に好きになるとは限らない
- 交際が始まった後の関係の満足度も、理想の一致度だけでは十分に説明できない
さらにジョエルらは2017年、機械学習を使った大規模な分析で、スピードデートの参加者の事前データ(年齢、価値観、性格、理想のタイプなど)から、特定の相手に対する恋愛的な好意を予測できるかどうかを検証しました。その結果、「誰が人気か」「誰が選り好みするか」といった全体的な傾向はある程度予測できたものの、「特定の二人の相性」はほとんど予測できなかったと報告されています。
つまり、プロフィールに書ける条件だけでは、「この人に惹かれる」という恋愛の化学反応は説明しきれないのです。
9-2. ズレが生まれる5つの理由
心理学の知見から、ズレの理由として次の5つが考えられます。
① 「条件」と「体験」は別物である 「優しい人がいい」という条件は、頭で考えた概念です。しかし実際の恋愛では、その人の表情、声、間の取り方、会話のテンポといった、言語化しにくい体験の総体に惹かれています。
② 自分でも気づいていない好みがある 愛着スタイルや、過去の経験によって形成された無意識のパターンは、自覚しにくいものです。意識では「安定した人がいい」と思いながら、無意識では「ドキドキする人」に惹かれる、ということが起こります。
③ 社会的に望ましい答えを選んでしまう 「好きなタイプは?」と聞かれると、「優しい人」「誠実な人」と答えるのが無難です。この社会的望ましさバイアスにより、本音の好みが表に出にくくなります。
④ 状況要因の影響が大きい 近接性、単純接触、返報性、吊り橋効果のように、恋愛は「タイミング」や「状況」にも強く左右されます。理想条件に合う人でも、出会いのタイミングや接点がなければ、恋愛に発展しません。
⑤ 「結婚相手の条件」と「恋愛相手の好み」は違う 第6章で紹介した調査は、あくまで「結婚相手に求める条件」です。恋愛の初期に惹かれる相手と、生涯を共にしたい相手とで、重視する基準が変わるのは自然なことです。
9-3. マッチングアプリを使う人への示唆
近年、マッチングアプリで「年収」「身長」「居住地」などの条件を絞り込んで相手を探す人が増えています。しかし、上記の研究を踏まえると、条件で絞り込みすぎることで、実際に会えば惹かれたかもしれない相手を最初から除外してしまう可能性があります。
条件はある程度絞りつつも、「絶対に譲れない条件(価値観・人柄・生活面での最低ライン)」と、「あれば嬉しい条件(外見・趣味など)」を分けて考え、実際に会って確かめる余地を残すことが、現実的なアプローチといえそうです。
10. 好きになる心理を恋愛に活かす7つの方法

ここまでの研究を、実生活で使える形にまとめてみましょう。大切なのは、相手をコントロールするためではなく、お互いが自然に好意を育てやすい環境を整えるために使うという姿勢です。
方法① 会う頻度と接点を「自然に」増やす
近接性と単純接触効果を活かす方法です。
- 同じ場所・同じ時間帯に顔を合わせる機会を作る(職場、趣味の集まり、習い事など)
- あいさつや短い会話を、無理のない範囲で重ねる
- メッセージのやりとりは、頻度よりも「返しやすさ」を意識する
大切なのは、相手が負担に感じない頻度を見極めることです。相手の反応が薄い状況で接触を増やしても、逆効果になる可能性があります。
方法② 共通点を見つけて、言葉にする
類似性の効果を活かす方法です。「知覚された類似性」が重要という研究結果から、共通点は「見つける」だけでなく、「口に出して伝える」ことで初めて効果を発揮します。
- 「私もそれ好きです」「同じ経験があります」と伝える
- 食べ物、音楽、休日の過ごし方など、些細な共通点で構わない
- 無理に合わせるのではなく、「本当に共通していること」を探す
嘘の共通点を作ると、関係が深まったときに矛盾が生じます。本物の共通点を探す姿勢が信頼につながります。
方法③ 好意を「さりげなく」伝える
好意の返報性を活かす方法です。ここでのポイントは、告白のような重いメッセージではなく、日常の小さなサインで好意を伝えることです。
- 名前を呼ぶ、話を覚えていて後日触れる
- 笑顔で相手の話を聞き、相づちや質問で関心を示す
- 「話せて楽しかった」と素直に伝える
相手が「この人は自分に好意的だ」と感じられれば、相手も安心して心を開きやすくなります。
方法④ 段階的に自己開示を深める
自己開示の研究を活かす方法です。ただし、初対面でいきなり深刻な悩みを打ち明けるのは、相手に重い負担を与えかねません。
- まずは、趣味や日常の出来事など軽い話題から
- 相手が自己開示してくれたら、こちらも同じくらいの深さで返す
- 少しずつ、価値観や過去の経験、将来の考えなど、内面的な話へ進む
アロンらの「36の質問」のように、「順番に、お互いに、少しずつ深く」というルールを意識すると、自然に親密さが育ちます。
方法⑤ 「変えられる魅力」を整える
外見の影響は大きいものの、その中で努力で変えられる領域は意外と多くあります。
- 清潔感(髪、肌、爪、衣服のしわや汚れ)
- 表情(口角、目元のやわらかさ)
- 姿勢や歩き方
- 声のトーンと話すスピード
- 自分に似合う服、TPOに合った服装
高価なブランドや整形などにこだわる必要はありません。「自分を大切にしている人」という印象が伝わることが、魅力につながります。
方法⑥ 安全で楽しい共有体験をつくる
吊り橋効果や自己拡張の研究を活かす方法です。ただし、恐怖や緊張を人為的に作り出すのではなく、「一緒に楽しめる少し刺激的な体験」が現実的です。
- 初めての場所や、新しい食べ物・アクティビティに一緒に挑戦する
- スポーツ観戦、ライブ、テーマパークなど、感情が高まる場を共有する
- 「初めてだったけど楽しかったね」という感想を分かち合う
新しい体験を共有すると、相手との時間そのものが「新鮮で楽しい」と結びつきやすくなります。
方法⑦ 「安心感」と「一貫性」を大切にする
クロネンとルオの研究が示すとおり、長期的に強く魅力になるのは、温かく安定した態度です。
- 約束や時間を守る
- 機嫌によって態度を大きく変えない
- 意見が違ったときも、相手の話を最後まで聞く
- 不安やストレスを、相手への攻撃ではなく言葉で伝える
派手なアピールよりも、こうした地味な積み重ねのほうが、最終的には「この人と一緒にいたい」という気持ちを育てます。
【重要】倫理面での注意
以上の方法は、いずれも「相手に好意を持ってもらうための工夫」ですが、相手の意思を無視した働きかけや、意図的な心理操作は避けてください。相手が距離を取りたいというサインを出している場合は、それを尊重することが最も重要です。恋愛心理は「相手を動かす技術」ではなく、「お互いが対等に選び合える関係を作るための知識」として使いましょう。
おすすめ11. 要注意:惹かれやすいが苦しくなりやすい3つのパターン

「強く惹かれること」と「幸せになれること」は別です。ここでは、心理学の観点から、特に注意したいパターンを3つ紹介します。
パターン① 「不安型×回避型」の組み合わせ
愛着研究では、不安型の人と回避型の人が惹かれ合いやすいことが、臨床の場でも度々指摘されています。この組み合わせでは、次のような悪循環が起きやすくなります。
- 不安型の人が、安心を求めて相手に近づく
- 回避型の人が、息苦しさを感じて距離を取る
- 不安型の人が、さらに不安になって追いかける
- 回避型の人が、さらに距離を取る
キルパトリックとデイヴィス(1994年)の縦断研究では、不安型の人と回避型の人のカップルは、他の組み合わせに比べて関係が不安定になりやすく、満足度も低い傾向があることが報告されています。
この関係で感じる強い感情の波は、「運命の恋」と錯覚されやすいものです。しかし、それは相性の良さではなく、「不安が刺激されている状態」である可能性があります。
対処のヒント
- 「ドキドキ」と「安心」を区別して、自分の感情を観察する
- 自分の愛着スタイルの傾向を知り、必要なら専門家に相談する
- 安定型の人との関わり(友人・家族を含む)を増やす
パターン② 「追いかける恋」ばかり選んでしまう
「なかなか気持ちを見せてくれない相手」「手に入りそうで入らない相手」に強く惹かれてしまうパターンです。心理学では、不確実な報酬(もらえるかどうか分からない状態)のほうが、確実に得られる報酬よりも強く行動を動機づけることが知られています。
相手の反応が予測できないほど、「もう一度確かめたい」という気持ちが強まるため、実際の相性以上に、執着が高まってしまう場合があります。
対処のヒント
- 「相手のどんなところが好きか」を、3つ以上具体的に書き出してみる
- その理由が「優しさ」などの中身ではなく、「気持ちが分からないから」になっていないか確認する
- 自分が疲れる、気持ちが消耗する関係になっていないか振り返る
パターン③ 「理想化」から始まる恋
ハロー効果により、外見や特定の魅力だけで、性格や価値観まで「素晴らしいはず」と思い込んでしまうパターンです。時間が経ち、相手の現実の姿が見えてくると、期待とのギャップがロス効果として作用し、幻滅につながることがあります。
対処のヒント
- 「この人の良いところ」と同時に、「気になる点」も観察する
- 相手の友人関係や家族との関係、ストレス下での振る舞いも見る
- 交際前に、価値観(お金、仕事、家族観、将来)について話す機会を持つ
⚠️ 「好き」の強さに関わらず、相談してほしいサイン
次のような状況がある場合は、相手への好意の強さにかかわらず、信頼できる人や専門機関に相談することをおすすめします。
- 相手の顔色をうかがって、常にびくびくしている
- 行動や交友関係を細かく監視・制限される
- 暴言、暴力、金銭面での支配がある
- 関係にいる自分が、以前より自信を失っている
たとえば内閣府の「DV相談ナビ(#8008)」や、お住まいの自治体の配偶者暴力相談支援センターなど、公的な相談窓口があります。最新の連絡先は、各機関の公式サイトでご確認ください。
12. 自分の「好きになるタイプ」を知るセルフチェック

最後に、自分自身の恋愛パターンを振り返るための簡単なワークを用意しました。診断ではなく、自己理解のきっかけとして使ってください。
ステップ① 過去の恋愛を振り返る
過去に好きになった人(3人程度)について、次の項目を書き出してみましょう。
| 質問 | 記入のヒント |
|---|---|
| どんなきっかけで好きになった? | 近くにいた/共通点があった/好意を示された など |
| どんなところに惹かれた? | 外見/優しさ/ギャップ/刺激的だった など |
| 付き合い始めて(あるいは片思い中)に、どんな気持ちが多かった? | 安心/ドキドキ/不安/疲れ など |
| 終わった(諦めた)理由は? | 価値観の違い/不安の強さ/すれ違い など |
ステップ② 共通点を見つける
3人分を並べて、共通するものを探します。
- 出会いの状況に共通点はある?(職場、SNS、友人の紹介 など)
- 惹かれた理由は似ている?(例:いつも「掴みどころのない人」)
- 関係の中で繰り返した感情パターンは?(例:いつも自分から確認したくなる)
ステップ③ 愛着スタイルの傾向をチェックする
次の文章に、どれくらい当てはまるかを考えてみてください(「よく当てはまる」「少し当てはまる」「ほとんど当てはまらない」)。
愛着不安の傾向
- 恋人からの返信が遅いと、嫌われたのではないかと不安になる
- 「本当に好き?」と確認したくなることが多い
- 相手が自分から離れていくのではないかと、よく考える
愛着回避の傾向
- 恋人に頼りすぎたり、頼られすぎたりするのが苦手
- 自分の悩みや感情を、相手に話すことに抵抗がある
- 距離が近づきすぎると、息苦しくなる
不安の項目に多く当てはまるなら「不安型」、回避の項目に多く当てはまるなら「回避型」の傾向がある可能性があります。どちらも当てはまらなければ「安定型」に近いと考えられます。両方に当てはまる場合は「恐れ・回避型」の傾向を持つ可能性もあります。
ステップ④ 「これからの好み」を言語化する
最後に、次の3つを書き出してみてください。
- 絶対に譲れない条件(価値観・人柄・安心して話せるかなど)
- あれば嬉しい条件(外見・趣味・ライフスタイルなど)
- これまでの経験から「避けたいパターン」(追いかける関係、不安が続く関係など)
「好きなタイプ」を条件で並べるよりも、「どんな関係の中で自分らしくいられるか」を基準に考えると、パートナー選びの精度が上がります。
おすすめ13. よくある質問(FAQ)

Q1. 人はなぜ、特定のタイプの異性を好きになるのですか?
A. 一つの理由では説明できません。心理学では、①生まれ持った傾向(外見や健康に対する反応など)、②育ちや経験(親との関係、これまでの恋愛、愛着スタイル)、③出会った状況(近接性、接触頻度、感情の高まり)の3つが重なり合って決まると考えられています。特に③は自覚しにくいため、「なぜかこの人に惹かれた」という感覚が生まれやすくなります。
Q2. 「好きなタイプ」は年齢や経験で変わりますか?
A. 変わる人は多いと考えられます。恋愛経験を重ねる中で、自分にとって本当に大切な条件が見えてきたり、ライフステージ(就職、結婚、育児など)の変化によって、パートナーに求めるものが変わったりします。また、愛着スタイルも、安定した関係を経験することで変化しうることが示されています。
Q3. 顔が好みではないのに、好きになることはありますか?
A. 十分にあります。単純接触効果、類似性、返報性、自己開示など、外見以外の要因でも好意は強く育ちます。「最初はタイプではなかったが、一緒に過ごすうちに好きになった」という経験は、心理学的にも自然なことです。
Q4. 男性と女性で、好きになる理由は違いますか?
A. 平均的な傾向としては、日本の調査でも、男性は「容姿」、女性は「経済力」を相対的に重視する傾向が見られます。ただし、男女とも最上位は「人柄」であり、共通する部分が大きいことも事実です。また、実際に人と会った場面での好意には、事前に語られる性差が現れにくいという研究もあり、個人差のほうが大きいと考えるのが妥当です。
Q5. 一目惚れは、心理学的にどう説明できますか?
A. 一目惚れに関する研究(ゾクらの2017年の研究など)では、一目惚れの多くは、外見的な魅力に対する強い初期反応であり、必ずしも「愛」そのものではない可能性が指摘されています。見た目、雰囲気、声、においなどの断片的な情報から、無意識のうちに「安心できそう」「魅力的」と判断している可能性があります。もちろん、そこから関係が深まって長く続くケースもあります。
Q6. 「好きなタイプ」と付き合う人が違うのは、おかしいことですか?
A. まったくおかしくありません。研究でも、事前に語られる理想の条件が、実際の好意を十分に予測しないことが示されています。「条件」よりも「実際に会ったときの体験や相性」のほうが、好意を左右するため、ズレが起きるのは自然なことです。
Q7. 恋愛感情が湧かない、好きなタイプがよく分からないのですが、変でしょうか?
A. 変ではありません。恋愛感情の持ち方には個人差があり、他者に恋愛感情や性的な関心を抱きにくい人(アロマンティック、アセクシュアルなど)もいます。また、これまでの経験や環境によって、「好きになる」感覚が分かりにくいと感じる時期もあります。焦らず、自分のペースで探っていくことが大切です。悩みが大きい場合は、カウンセラーなど専門家に相談する方法もあります。
Q8. この記事の内容は、同性への恋愛感情にも当てはまりますか?
A. 本記事は検索されやすいキーワードに合わせて「異性」という表現を使っていますが、近接性、単純接触効果、類似性、返報性、自己開示、愛着スタイルといった基本的な心理メカニズムは、恋愛対象の性別にかかわらず共通する部分が大きいと考えられています。一方、進化心理学的な議論や、男女別の傾向は、異性間のデータが中心です。

14. まとめ
この記事では、「人はどんなタイプの異性を好きになるのか」という問いに対して、心理学の研究や日本の調査データをもとに解説してきました。最後に、要点を整理します。
① 好きになるタイプは「素質×経験×状況」で決まる 生まれ持った傾向、育ちや過去の恋愛経験、出会った状況が重なり合って、恋愛感情は生まれます。
② 8つの要因のうち、多くは「接し方・状況」に関わるもの 近接性、単純接触効果、類似性、外見(ハロー効果)、返報性、ゲイン・ロス効果、吊り橋効果、自己開示——これらは、いずれも「相手の中身そのもの」ではなく、二人の関わり方や状況に左右されるものです。
③ 男女ともに、最も重視されるのは「人柄」 日本の調査でも、世界37文化を対象とした研究でも、男女共通で上位に来るのは「信頼できる人柄」や「思いやり」でした。外見や経済力の男女差はあるものの、それは「共通部分」の上に乗った差にすぎません。
④ 愛着スタイルを知ると、惹かれやすいパターンが見えてくる 「ドキドキ」と「安心」を区別し、自分がどんな関係で消耗しやすいかを知っておくことは、恋愛の失敗を減らす助けになります。愛着スタイルは、経験によって変化しうることも忘れないでください。
⑤ 「好きなタイプ」は自己申告ほど当てにならない 理想の条件が、実際の好意を十分に予測しないことは、複数の研究で示されています。条件だけで相手を判断せず、実際に会って、時間を過ごして確かめる姿勢が大切です。
⑥ 惹かれることと、幸せになれることは別 初対面での魅力ではなく、意見が食い違ったときの態度や、感情の安定、思いやりといった「長続きする要素」も、パートナー選びでは大切な観点です。
恋愛は、正解のない、人生でも特に複雑で豊かな体験の一つです。心理学の知識は、その複雑さを少しだけ見通しよくしてくれる「地図」のようなもの。地図を持ちつつも、最後は目の前の相手と、自分自身の心の声に耳を傾けてみてください。
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