セックスレスの心理学｜男女の「なぜ？」を徹底解剖し、関係を再構築する全ステップ

はじめに：これは、あなたの物語かもしれない
第1章：セックスレスの現状と定義 – 私たちだけ、ではないという事実
第2章：なぜ？セックスレスになる【男性の心理】
第3章：なぜ？セックスレスになる【女性の心理】
第4章：夫婦関係に潜むセックスレスの心理的要因
第5章：セックスレスが心と関係に与える深刻な影響
第6章：セックスレス解消へ向けた心理的アプローチ【超実践編】
第7章：セックスレスに関するよくある質問（Q&A）
おわりに：セックスレスは、夫婦関係を見つめ直す「きっかけ」

はじめに：これは、あなたの物語かもしれない

「最後にパートナーと肌を合わせたのは、いつだっただろう…」

もしあなたが今、そう心の中で呟いたのなら、この記事はあなたのために書かれました。

セックスレスは、現代日本において非常に多くの夫婦が直面している問題です。ある調査によれば、既婚者の半数以上がセックスレスだと感じているというデータもあります。[1] しかし、その深刻さとは裏腹に、これは非常にデリケートで、誰にも相談できずに一人で抱え込みがちな悩みでもあります。

「愛されていないのかもしれない」「女性（男性）として魅力がないのだろうか」「このまま夫婦関係は冷え切ってしまうのだろうか…」

そんな不安や孤独感が、静かに心を蝕んでいく。セックスレスは単なる「夜の営みがない」という事実以上に、自己肯定感の低下や夫婦間の信頼関係の崩壊にも繋がりかねない、根深い問題なのです。[2]

しかし、希望を失う必要はありません。セックスレスになる背景には、必ず男女それぞれの複雑な「心理」が隠されています。そして、その心理を正しく理解し、適切なステップを踏むことで、冷え切ってしまった関係に再び温もりを取り戻すことは十分に可能です。

この記事では、単なる原因の羅列やありきたりな解決策に終始するのではなく、「セックスレスの心理」という核心に深く迫ります。

この記事を読み終える頃には、あなたはセックスレスという問題の全体像を深く理解し、パートナーと再び心を通わせるための具体的な「地図」を手にしているはずです。

これは、他人事ではありません。多くの夫婦が経験する、ごくありふれた、しかし非常に重要な物語です。さあ、一緒にその深層心理を紐解き、解決への第一歩を踏み出しましょう。

第1章：セックスレスの現状と定義 – 私たちだけ、ではないという事実

まず最初に、あなたに知っておいてほしいことがあります。それは、「セックスレスに悩んでいるのは、あなただけではない」という事実です。

セックスレスの定義とは？

日本性科学会では、セックスレスを「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以上ない状態」と定義しています。[3]
「セクシュアル・コンタクト」には、キスや愛撫、裸でのスキンシップなども含まれます。[3] つまり、挿入を伴う性交だけでなく、あらゆる性的な触れ合いが1ヶ月以上ない場合、それはセックスレスと言えるのです。[3]

しかし、この定義はあくまで一つの目安です。大切なのは「期間」そのものよりも、「当事者の一方、あるいは双方がその状況に不満や苦痛を感じているかどうか」です。たとえ性交がなくてもお互いが満足しているのであれば、それは問題ではありません。[4] 問題なのは、そこに求める気持ちのすれ違いがある場合です。[4]

驚くべき日本のセックスレス率

日本のセックスレス率は、年々増加傾向にあり、世界的に見ても高い水準にあると言われています。「セックスレス大国・日本」と表現されることもあるほどです。[5]

ある調査では、20代から50代の既婚者のうち68.2％がセックスレス傾向にあり、そのうち43.9％が「完全なセックスレス状態」であると報告されています。[6]
また、別の調査では既婚者の55.2%が「セックスレスだと思う」と回答しており、特に40代から50代の男性ではその割合が6割にものぼります。[1]

これらのデータが示すのは、セックスレスが決して珍しい問題ではなく、多くの夫婦が直面する「社会問題」とも言える現実です。[6][7]

なぜセックスレスは「問題」になるのか？

セックスは、単なる肉体的な行為ではありません。それは夫婦間の愛情を確認し、親密さを深めるための重要なコミュニケーションの一つです。

セックスレスが続くと、以下のような様々な心理的・関係的な問題を引き起こす可能性があります。[2][8]

孤独感と自己肯定感の低下： 「自分はパートナーにとって価値のない存在なのではないか」と感じ、深く傷つき、孤独感を募らせます。
信頼関係の悪化： コミュニケーションが不足し、お互いへの不信感が生まれます。
浮気や離婚のリスク： 満たされない思いから、パートナー以外に愛情や性的欲求の捌け口を求めてしまったり、最終的に離婚という選択肢に至るケースも少なくありません。[8]

このように、セックスレスは夫婦関係の根幹を揺るがしかねない深刻な問題なのです。しかし、問題を正しく認識することは、解決への第一歩です。次の章からは、その核心である「男女の心理」を具体的に解き明かしていきます。

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第2章：なぜ？セックスレスになる【男性の心理】

「夫が求めてくれない…」その背景には、男性特有の繊細で複雑な心理が隠されています。女性からすると理解しがたいかもしれませんが、彼の沈黙の裏にある本音を知ることが、関係改善の鍵となります。

1. 仕事のストレスと深刻な疲労

現代社会で働く男性は、常に大きなプレッシャーに晒されています。長時間労働、人間関係、成果への期待。これらのストレスは心身を蝕み、性欲という生命エネルギーの源を直接的に削ぎ落とします。[9]

心理的背景： 男性にとって仕事は、自己実現やアイデンティティと直結していることが多いです。仕事に没頭しすぎると、家庭に持ち帰るエネルギーが残っておらず、性的興奮を昇華させてしまうことがあります。[10]
身体的影響： 過度なストレスは、男性ホルモンである「テストステロン」の分泌を低下させます。テストステロンは性欲を司る重要なホルモンであり、この減少が直接的に性欲減退につながるのです。[9]

「疲れているから」という彼の言葉は、決してあなたを拒絶するための言い訳ではなく、心と体からの悲鳴なのかもしれません。

2. 「男としての自信」の喪失

男性の性的なパフォーマンスは、精神的な自信と非常に密接に結びついています。特にED（勃起不全）への不安は、多くの男性が口に出せずに悩んでいる問題です。

拒絶への恐怖： 過去に一度でも誘いを断られた経験があると、「また拒絶されたらどうしよう」という恐怖心が生まれ、誘うこと自体が億劫になってしまいます。[11] 男性はプライドが高い生き物であり、性的な拒絶は自身の全人格を否定されたかのような深い傷を心に残すことがあります。
ED（勃起不全）への不安： 加齢やストレス、生活習慣病などにより、EDの症状を経験する男性は少なくありません。[9] 「途中でダメになったらどうしよう」「満足させられなかったら軽蔑されるのでは」というプレッシャーが、セックスそのものを避ける行動に繋がります。

3. 妻を「女性」から「家族」「母親」として見てしまう

長く一緒に暮らす中で、かつて恋愛対象だった妻が「家族」や「子どもの母親」という役割に変化していくことは、多くの夫婦が経験することです。[12]

母親化現象： 特に子どもが生まれると、妻は「母」としての役割に集中します。その姿に神聖さや尊敬の念を抱く一方で、性的な対象として見ることが難しくなる男性は少なくありません。[12][13]
裸を見慣れることによるマンネリ： 一緒にお風呂に入るなど、裸を見慣れてしまうことで、性的な興奮や新鮮味が失われていくことも原因の一つです。[11] 日常の中に「異性」としての緊張感がなくなることで、セックスへの意欲も減退してしまうのです。[3]

4. ポルノや自慰行為による満足

パートナーとのセックスに問題を抱えている場合、男性はポルノや自慰行為にその捌け口を求めることがあります。

手軽さと確実性： ポルノは、相手を気遣う必要も、拒絶される心配もなく、手軽に性的な満足を得られる手段です。ここに安住してしまうと、現実のパートナーとのコミュニケーションを伴うセックスが億劫に感じられるようになります。
非現実的な刺激への慣れ： ポルノで描かれるような過剰な刺激に慣れてしまうと、現実のセックスでは満足できなくなってしまう「刺激中毒」のような状態に陥ることもあります。

5. 妻への不満や愛情の低下

口には出さずとも、日々の生活の中で妻への不満が蓄積している場合もあります。

コミュニケーション不足： 日常的な会話が減り、心の距離が離れてしまうと、身体的な繋がりを求める気持ちも自然と薄れていきます。
感謝や尊敬の欠如： 「言わなくても分かってくれるだろう」という甘えから、感謝の言葉や思いやりのある態度が欠けてしまうと、パートナーへの愛情は少しずつ冷めていきます。セックスは愛情表現の一つの形であるため、愛情が感じられなければ、その行為に至ることも難しくなります。

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第3章：なぜ？セックスレスになる【女性の心理】

「求められても、そんな気になれない…」女性がセックスを拒否する背景には、男性とは全く異なる、心と体の繊細なメカニズムが存在します。

1. 出産・育児による心身の消耗

出産は、女性の人生における最大のイベントの一つですが、心と体に想像以上のダメージと変化をもたらします。

身体的ダメージとホルモンバランスの変化： 出産による体のダメージが回復するには時間がかかります。また、産後はホルモンバランスが急激に変化し、一時的に性欲が大きく減退することが知られています。[3][14]
育児による極度の疲労： 昼夜を問わない授乳やおむつ替え、夜泣きの対応などで、女性は慢性的な睡眠不足と疲労状態に陥ります。[3] 「セックスどころではない」「とにかく休みたい」というのが本音であり、これは愛情の有無とは全く別の問題です。[15][16]

2. 夫を「男性」から「同居人」「父親」として見てしまう

男性が妻を「母親」と見るように、女性もまた夫を「子どもの父親」や「家族」という役割で見るようになります。

異性としての意識の低下： 夫の脱ぎっぱなしの服、無神経な言動など、日々の生活の中で幻滅する出来事が積み重なると、異性としての魅力を感じられなくなってしまいます。[15][17]
不満の蓄積： 「家事や育児に協力的でない」「感謝の言葉がない」といった日々の不満は、夫に対する嫌悪感に繋がりかねません。[15] 心が満たされていない状態で、体だけを求められても応えることは難しいのです。[15]

3. 性行為に対するネガティブな感情

セックスそのものに対して、痛みや不快感、面倒くさいといったネガティブな感情を抱いている女性は少なくありません。

性交痛： 出産後の体の変化や、ホルモンバランスの乱れによる潤滑不足などで、性交時に痛みを感じることがあります。[14] 一度でも痛い経験をすると、それがトラウマとなり、セックスを避けるようになります。
オーガズムを感じない： 日本の女性は、セックスでオーガズムを感じていない割合が高いと言われています。自分だけが気持ちよくなれない、相手に奉仕するだけの行為だと感じてしまうと、セックスは喜びではなく苦痛や義務になってしまいます。
面倒くさいという感情： 疲れている時に求められると、前戯から後片付けまでの一連の流れが「面倒くさい」と感じてしまうことがあります。[17]

4. スキンシップ不足による心の距離

多くの女性にとって、セックスは日常的な愛情表現の延長線上にあるものです。

心の繋がりが先： 日頃から手をつなぐ、ハグをする、感謝の言葉を伝えるといったコミュニケーションがないのに、夜だけ突然求められても、心と体がついていきません。[18]
「女として扱ってほしい」という本音： 妻や母である前に、一人の「女性」として大切に扱ってほしい、愛されていると実感したい、という気持ちが根底にあります。[18] 日常のスキンシップや愛情表現が、性的欲求のスイッチを入れるための重要な鍵となります。

5. 加齢によるホルモンバランスの変化

女性の体は、ライフステージごとにホルモンバランスが大きく変動します。特に30代後半から40代にかけては、女性ホルモン「エストロゲン」が減少し始め、性欲の低下や膣の乾燥などを引き起こすことがあります。[14][15] これは自然な体の変化であり、愛情の低下とは直接関係ありません。[14]

第4章：夫婦関係に潜むセックスレスの心理的要因

男女それぞれの心理に加え、二人の「関係性」そのものにセックスレスの原因が潜んでいることも少なくありません。問題は「彼」や「彼女」個人にあるのではなく、「私たち」の間にあるのかもしれません。

1. コミュニケーションの致命的な不足

セックスレスに悩む夫婦の多くが、日常的なコミュニケーション不足に陥っています。[3]

「言わなくてもわかる」という幻想： 長年連れ添った夫婦ほど、「言わなくても相手は自分の気持ちを理解してくれているはずだ」と思い込みがちです。しかし、これは危険な幻想です。[3] 気持ちは言葉にしなければ伝わりません。
性の話題のタブー視： 日本の文化では、夫婦間であっても性の話をオープンにすることを躊躇する傾向があります。[4] 自分の欲求や不満を伝えられないまま、お互いに憶測で相手の気持ちを判断し、すれ違いが深刻化していきます。

2. 感謝とリスペクトの欠如

「ありがとう」「お疲れ様」「助かるよ」。こうした日常の何気ない感謝の言葉が、夫婦関係の土台を支えています。

当たり前の存在になることの弊害： 一緒にいることが当たり前になると、相手への感謝や尊敬の念が薄れがちです。[3] パートナーを空気のような存在としてぞんざいに扱ってしまうと、相手の心は静かに離れていきます。[3]
思いやりのなさ： 相手が疲れているのに自分の欲求を押し付けたり、家事や育児の大変さを理解しようとしなかったりする態度は、相手の愛情を急速に冷まします。

3. 「子ども中心」の生活

子どもの誕生は夫婦に大きな喜びをもたらしますが、同時に夫婦関係の在り方を大きく変えるきっかけにもなります。

夫婦の時間の喪失： 育児に追われ、夫婦二人きりで過ごす時間が極端に減ってしまいます。[15] 会話の内容も子どものことが中心になり、「男と女」としての関係性が希薄になります。
子どもがいることへの気兼ね： 「子どもが起きてしまうかもしれない」「声を聞かれたらどうしよう」という懸念から、セックスに集中できなくなり、次第に遠ざかってしまうケースも多くあります。[15]

4. 過去のトラウマや裏切り

過去の浮気や、心ない一言など、夫婦間に解決されないままの心の傷が残っている場合、それがセックスレスの直接的な原因になることがあります。

許せない気持ち： パートナーへの不信感や怒りを抱えたままでは、心から相手を受け入れ、肌を合わせることは困難です。
再発への恐怖： 身体的な関係を持つことで、再び傷つくのではないかという無意識の恐怖が、セックスを拒否する行動に繋がっている可能性があります。

夫婦カウンセラーの西澤寿樹氏は、セックスレスは夫婦間に存在する様々な問題の「しわ寄せ」として現れることが多いと指摘しています。セックスレスという現象の裏に、関係性の本質的な問題が隠れていることが多いのです。[19]

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第5章：セックスレスが心と関係に与える深刻な影響

セックスレスを「ただセックスがないだけ」と軽視してはいけません。その状態が長期化すると、個人の心、そして夫婦関係全体に深刻な影を落とすことになります。

1. 自己肯定感の崩壊と孤独感

パートナーから性的に求められない、あるいは求めても拒絶されるという経験は、想像以上に深く心を傷つけます。

「自分には価値がない」という思い込み： 「異性としての魅力がないのだろうか」「人間として欠陥があるのではないか」といった自己否定のループに陥り、自信を完全に失ってしまいます。
家庭内での孤立： 同じ家に暮らしながらも、心は通い合っていない。誰にも理解されない孤独感は、精神的に非常に辛いものです。[2]

2. パートナーへの不信感と愛情の枯渇

セックスは、愛情を確認し合う重要なコミュニケーションです。その機会が失われることで、二人の心の絆は少しずつ脆くなっていきます。

「愛されていない」という不安： 言葉で「愛している」と言われても、身体的な繋がりがなければ、その言葉を信じることが難しくなります。「本当に私のことを大切に思ってくれているのだろうか」という疑念が常に心をよぎります。
触れ合うことへの気まずさ： セックスレスの状態が続くと、手をつなぐ、ハグをするといった日常的なスキンシップさえも気まずく、避けるようになってしまいます。身体的な距離は、さらに心の距離を遠ざける悪循環を生み出します。

3. 浮気や離婚へと繋がるリスク

満たされない心と体の欲求は、時に夫婦関係を破綻させる引き金となります。

家庭外に承認を求める心理： パートナーから得られない「異性としての承認」や「必要とされている感覚」を、家庭の外に求めてしまうことがあります。これが浮気や不倫の入り口になるケースは少なくありません。[8]
離婚の正当な理由として： 法律上、セックスレスは「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚原因と認められる可能性があります。実際に、セックスレスがきっかけで関係が悪化し、離婚に至る夫婦は数多く存在します。[8]

4. メンタルヘルスへの影響

長期にわたるセックスレスのストレスは、うつ病や不安障害などの精神的な不調を引き起こすこともあります。

ストレスホルモンの増加： 幸福感や安心感をもたらすオキシトシン（愛情ホルモン）の分泌が減少し、ストレスホルモンであるコルチゾールが増加しやすい状態になります。
生きる意欲の低下： パートナーとの親密な関係は、人生の満足度や幸福感に大きく影響します。その土台が揺らぐことで、何事にもやる気が起きない、将来に希望が持てないといった状態に陥ることがあります。

セックスレスは、目に見えない形で確実に心と体を蝕んでいきます。この深刻な影響を理解し、手遅れになる前に行動を起こすことが何よりも重要です。

第6章：セックスレス解消へ向けた心理的アプローチ【超実践編】

セックスレスの原因と影響を理解した今、いよいよ最も重要な「解消」のためのステップに進みます。ここで紹介するのは、小手先のテクニックではありません。夫婦の心理的な壁を乗り越え、関係を根本から再構築するための、具体的で実践的なアプローチです。

ステップ1：自分自身の心と向き合う（自己分析）

まず、パートナーを変えようとする前に、あなた自身の心の内側を深く見つめ直すことから始めましょう。

感情のジャーナリング（書き出し）：
- ノートとペンを用意し、「セックスレスについて今、何を感じているか」を正直に書き出してみましょう。「寂しい」「悲しい」「腹が立つ」「惨めだ」「もうどうでもいい」…どんな感情も否定せず、ありのままを書き出すことが重要です。
- 「本当はどうしたいのか？」を自問自答します。「昔のようにラブラブになりたい」「ただ、人として尊重されたい」「セックスがしたいというより、愛されている実感がほしい」など、自分の本当の欲求（ニーズ）を明確にします。
自分の「思い込み」に気づく：
- 「セックスは夫（男性）から誘うべきだ」「妻（女性）はいつも受け身であるべきだ」「夫婦なのだからセックスがあって当たり前だ」といった、無意識の「べき思考」や「当たり前」という思い込みが、問題解決を妨げている可能性があります。これらの思い込みに気づき、一度手放してみましょう。

ステップ2：運命を変える対話術「アイメッセージ」で伝える

セックスレスの話し合いで最もやってはいけないのが、相手を責めることです。「なぜしてくれないの？（Youメッセージ）」ではなく、「私はこう感じている（Iメッセージ）」を主語にして伝えましょう。[2][20]

準備：穏やかな時間と場所を選ぶ
- 子どもが寝た後や、休日のリラックスした時間など、お互いに心に余裕がある時を選びます。テレビは消し、スマホは置いて、二人きりで向き合える環境を作りましょう。[20]
伝え方の具体例：
- NG例（Youメッセージ）： 「なんであなたはいつも疲れてるって言うの？」「私のこと、もう女として見てないんでしょ！」
- OK例（Iメッセージ）： 「最近、あなたと肌が触れ合う時間がなくて、私は少し寂しいなと感じているんだ。」「あなたに触れてもらえないと、私は女性としての自信がなくなってきて、悲しくなる時があるの。」
相手の話を「傾聴」する：
- 自分の気持ちを伝えたら、今度は相手の話を遮らず、否定せずに最後まで聴くことに徹します。「そうだったんだね」「あなたはそう感じていたんだね」と、まずは相手の気持ちを受け止める姿勢が、心の壁を溶かす第一歩です。

ステップ3：セックスから始めない。「非性的スキンシップ」の復活

いきなりセックスを目指すのはハードルが高いです。まずは、日常生活の中に「セックスを目的としない、心地よい触れ合い」を取り戻すことから始めましょう。[21]

具体的なアクションプラン：
- 手をつなぐ： テレビを見ながら、散歩をしながら、5分だけでも手をつないでみましょう。
- ハグ： 「いってきます」「おかえりなさい」の挨拶に、3秒間のハグをプラスします。
- マッサージ： 「疲れてるでしょ？」と、肩や腰をマッサージしてあげる。見返りを求めない純粋な思いやりが大切です。
- 隣に座る： いつもは対角線上に座っている食卓で、隣に座ってみる。物理的な距離を縮めることが、心の距離を縮めます。

これらのスキンシップは、「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌を促し、安心感と親密さを高める効果があります。

ステップ4：日常に「恋」のスパイスを。非日常の演出

マンネリ化はセックスレスの大きな原因です。[15] 夫婦関係に、付き合いたてのような新鮮な刺激を取り戻す工夫をしてみましょう。

夫婦二人きりのデートを計画する：
- 子どもを預けて、少しお洒落をして、思い出のレストランや初めてデートした場所を訪れてみましょう。[22][23] 「妻」「夫」という役割から解放され、「一人の男性・女性」として向き合う時間を作ることが重要です。[22]
寝室の環境を変える：
- 寝室を「ただ寝るだけの場所」から「二人でリラックスする空間」へと変えてみましょう。間接照明を取り入れる、肌触りの良いシーツに変える、アロマを焚くなど、五感を刺激する工夫が効果的です。
感謝や愛情を言葉で伝える習慣：
- 「今日の夕飯、すごく美味しかったよ。ありがとう」「いつも頑張ってくれてありがとう」など、具体的な感謝の気持ちを毎日伝えることを意識します。[20] 愛情を実感することが、セックスレス解消に繋がることがあります。[20]

ステップ5：二人だけで抱え込まない。専門家の力を借りる

自分たちだけの力ではどうにもならない時、専門家の助けを借りることは決して恥ずかしいことではありません。むしろ、賢明な選択です。[2][24]

夫婦カウンセリング／セックスセラピー：
- 専門のカウンセラーは、夫婦問題や性の専門家です。[24] どちらか一方の味方をするのではなく、中立的な立場で二人の話を聴き、問題の根本原因を整理し、コミュニケーションの橋渡しをしてくれます。[19][24]
- カウンセリングを受けることで、自分たちでは気づけなかった問題の本質が見えたり、性に関する正しい知識を得られたりするメリットがあります。[8]
医療機関（婦人科・泌尿器科）：
- 女性の性交痛や潤滑不足、男性のEDなど、身体的な問題が原因の場合は、医療の力で解決できることが多くあります。[14] 例えば、ED治療薬の利用がセックスレス解消のきっかけになることもあります。[20] 身体的な問題を放置せず、専門医に相談する勇気を持ちましょう。

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第7章：セックスレスに関するよくある質問（Q&A）

ここでは、セックスレスに関して多くの人が抱く疑問について、専門家の知見を交えながらお答えします。

Q1. どのくらいの期間からセックスレスと言えますか？

A1. 日本性科学会は「1ヶ月以上」と定義していますが、これはあくまで目安です。[3] 20代〜30代の男女を対象にした調査では、恋人・夫婦ともに「1ヶ月以上」でセックスレスだと感じると答えた人が最も多い結果となっています。[3] しかし、大切なのは期間よりも「その状態にどちらか、あるいは双方が苦痛を感じているか」です。お互いが納得していれば、頻度は問題ではありません。

Q2. 子どもがいるとセックスレスになりやすいのは本当ですか？

A2. はい、その傾向は強いと言えます。ある調査では、子どもがいる夫婦の方が、いない夫婦に比べてセックスレスの割合が高いという結果が出ています。[7] 妊娠・出産がセックスレスの直接的なきっかけになることも多く、レス当事者の4人に1人が妊娠・出産を契機として挙げています。[6] これは、産後の女性の身体的・ホルモン的変化や、育児による疲労、生活が子ども中心になることなどが主な原因です。[3][6]

Q3. パートナーが話し合いに応じてくれません。どうすればいいですか？

A3. まず、相手が話し合いを避ける背景にある心理を考えてみましょう。「責められるのが怖い」「どう答えていいかわからない」「問題と向き合うのが面倒」など、様々な理由が考えられます。
いきなり「セックスレスについて話したい」と切り出すのではなく、「最近、ゆっくり話せてないから、少しだけ二人の時間を作らない？」と、ハードルを下げて提案してみましょう。そして、話す際は第6章で紹介した「アイメッセージ」を使い、決して相手を責めないことが重要です。「あなたの話も聞かせてほしい」という姿勢で、まずは相手の心を開くことを目指しましょう。それでも難しい場合は、夫婦カウンセリングなど第三者の力を借りることを検討するのも一つの手です。[13]

Q4. 解消を諦める、という選択肢はありますか？

A4. はい、それも一つの選択肢です。セックスの価値観は人それぞれであり、セックスがなくても他の部分で強い絆で結ばれている夫婦もいます。お互いが「セックスはしない」という形で合意し、その上で良好なパートナーシップを築けているのであれば、無理に解消を目指す必要はありません。
ただし、それはあくまで「双方が納得している」場合に限ります。どちらか一方が我慢を強いられている状態は、いずれ関係の破綻に繋がる可能性があります。諦めるという結論を出す前に、一度は本音で話し合い、お互いの気持ちを確認することが不可欠です。

おわりに：セックスレスは、夫婦関係を見つめ直す「きっかけ」

ここまで読んでくださったあなたは、セックスレスという暗く長いトンネルの中で、ただ一人で立ち尽くしていた状態から、出口の方向を照らす「地図」と「懐中電灯」を手に入れたはずです。

セックスレスになるのは、決してどちらか一方が悪いわけではありません。多くの場合、それは仕事のストレス、心身の変化、コミュニケーションのすれ違いといった、様々な要因が複雑に絡み合った結果です。男性も女性も、それぞれの立場で悩み、傷つき、言葉にできない想いを抱えています。[9]

大切なのは、その背景にある「心理」を理解しようと努め、相手を責めるのではなく、思いやること。そして、諦めずに一歩を踏み出す勇気を持つことです。

もちろん、関係の修復には時間がかかるかもしれません。一度の話し合いで全てが解決するわけではないでしょう。しかし、この記事で紹介したステップを一つでも実践することで、凍りついた二人の関係に、確かな変化の兆しが生まれるはずです。

セックスレスは、夫婦関係の「終わり」ではありません。

むしろ、これまで見て見ぬふりをしてきたお互いの心と深く向き合い、より成熟したパートナーシップを再構築するための「神様がくれたきっかけ」なのかもしれません。

この記事が、あなたのその一歩を後押しできたなら、これに勝る喜びはありません。

もう一度、パートナーの目を見てみませんか。そして、あなたの素直な気持ちを伝えてみませんか。

あなたの夫婦関係が、再び温かい光に包まれることを、心から願っています。

【参考ウェブサイト】

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